スコットランドの独立問題は人々の注目の的ですが、スコットランドが独立を要求する理由を知っている人、国外にいながらスコットランドが置かれている今の状況を把握している人は、そう多くはないでしょう。
スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、ここに来てスコットランド独立の是非を問う住民投票の実施を要求し始めています。投票が行われる時期は、2018年の秋ではないかとの説が有力です。ロンドン(英国政府)・ブリュッセル(EU本部)間のブレグジット交渉において、せめてスコットランドだけでも(現時点でその見込みは薄いものの、テレーザ・メイ政権が考え直すならば英国全体も?)欧州単一市場には留まることになるのか否か、それまでには目星が付くことになるでしょう。
イギリスとは異なり、スコットランド人の多くはブレグジット住民投票で反対票を投じることで、我々は欧州の一員で居続けるべし、最低でもEUと商取引ができる立場を固辞すべしとの立場を表明しました。 英国からの独立の是非を問う2度目の投票を行なわない場合、これはエディンバラの自治政府が出す最低条件となります(55パーセント対45パーセントという僅差で敗退した2014年9月の投票結果を受けて)。当然ながら、首相のテリーザ・メイは(当初のデヴィッド・キャメロンのように)スコットランド住民投票を認可することになるでしょう。これを拒否すれば、20年分の歴史の後退によって不信感を煽り、引いてはスコットランドとの正面衝突をも免れなくなるからです。
ロンドン側としては、住民投票の可能性を明白には否定していないものの、欧州連合との「離婚」交渉の成立後まで、その日程をできる限り引き延ばそうとしています。しかしスコットランドが2度目の投票を行う勇気はなく、虚勢を張っているだけだという見方は徐々に信ぴょう性を失いつつあります。1年以内には答えが出るはずなので、私たちはその行方を興味深く見守っていきましょう。
「スコットランドは独立国家になるべきか?」このテーマは、数か月、いや数年にわたって人々の議論の的となって来ました。
2018年の投票を政府が発表して以来、両陣営からは様々な選挙キャンペーンが展開されています。著名人や英国寄りの考えの持ち主が“Let’s Stay Together(レッツ・ステイ・トゥゲザー)”という大規模スローガンを展開する一方で、独立推進派は”Yes Scotland(イエス、スコットランド)“と銘打ったキャンペーンを張って同名の党を支援しています。何年か前にエディンバラ城の背後の丘に巨大な”Yes“の文字を掲げて話題になった女性がいたので、聞いたことがある人もいるかもしれません。
2014年の投票ではスコットランドが英国の一部として留まることになりましたが、最終結果が出るまで、結果は予測不能でした。
80パーセントを超える歴史的な投票率の中、独立反対の票を投じたスコットランド人は55パーセントのみ。投票者数の中には、かつて投票というものをしたことがない人たち、何年も選挙に参加しなかった人たちも含まれます。
16~17歳の若者たちに初めて投票権が与えられたという点でも、この選挙は歴史的に有意義な出来事でした。現代のスコットランドにおいてこの投票がいかに重要であったか、このことからも分かりますよね。
政治だけでなく、映画「ブレイブハート」を観て独立を夢想していた人々にも、この投票は“Scottish awakening(スコットランドの目覚め)”をもたらしました。イギリス労働党はこの一連の流れを受けて「連帯」を強調した政策を打ち出し、英国の異なる地域間の断絶意識を緩和しようとしています。
とにもかくにも、この投票は英国政治の未来予想図を書き換えるものでした。新しい年にさらなる変化が待ち受けているのかどうか、今はまだ誰にも分かりません。