新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態にある今、私たちは身体の健康に目を向けがちですが、イギリスの保健当局は精神を良い健康状態に保つことも重要であると強調しています。現在経験しているようなかつてない緊急事態には、精神的な健康問題が増えることはほぼ間違いないからです。
テレビでは「このウイルスが引き起こす不安」や、ソーシャル・ディスタンシング(人と人との距離の十分な確保)による「孤立がもたらすストレス」についての話題が多く、精神の健康に非常に大きな影響を与える恐れがあると指摘しています。
もうひとつ付け加えると、このウイルスのせいで多くの人がお金や仕事を失っています。つまり、先の見えない不安や恐怖心を与えるだけでなく、これこそがストレスや落ち込みの大きな原因になっている可能性があります。
今まで心の健康について悩んだことがなかった人でさえ、今は経済的な苦しさやソーシャルディスタンシングによって精神的な苦痛を感じています。現在はテレワークなどの情報通信技術を利用したスマートワークや、友達とやり取りをするためにテクノロジーに頼っていますが、テクノロジーは時に孤立をいっそう深めたり、特に若者に間違った方法で利用されたりすることがあるのも事実です。
テレビコマーシャルは子供や若者向けのデジタルリソースの宣伝を続け、テレビやソーシャルメディアの健全な利用を呼びかけています。
スコットランド政府もロックダウン実施中に市民が守るべき基本的な注意事項を発表しました。そこには次の内容が含まれています。
- ビデオ通話や電話を利用して家族や友達と連絡を取り続ける
- 良好な睡眠パターンや運動など、適切な日課を取り入れた生活設計をする
- ひとりひとりが自分でできる前向きなことに目を向ける
また、インターネット上にあふれるフェイクニュースにも注意するよう警告しました。
政府は経済的支援を必要とする人を援助するため、食料を買うお金のない人に食べ物を配るフードバンク・オブ・スコットランドをはじめ、さまざまなリソースやプログラムを活用した資金調達も模索しています。
例えばスコットランドの漁師は、新型コロナウイルスによる危機のために水産物の需要が急激に落ち込む中、多くが仕事を失い家族を養えなくなったためフードバンクや福祉団体を頼っています。
中でも最も大きな打撃を受けたのはロブスターやカニを捕る漁師でした。
スコットランドには他にもいろいろな支援団体があります。スコットランド政府のユニークなプログラムであるキャッシュバック・フォー・コミュニティーズは、犯罪によって得た収益として差し押さえられているお金を活用して若者の支援に当てていますし、チャリティ援助財団は新型コロナウイルス感染症で被害を受けたイギリスの小規模な慈善団体を支援し、最大1万ポンド(約132万円)の補助金を支給しています。
スコットランドではCOVID-19による緊急事態下に求人募集と応募ができるワールド・オブ・ワークという新たな雇用ポータルサイトもできました。企業の中にはこの緊急事態に適応してスカイプによる面接を求めたり、オンラインでの契約やテレワーク環境を提案したりしているところもあります。
一部の教会や大司教区は経済的に恵まれないコミュニティを支援するために少額の補助金を設け、幅広い活動やプロジェクトを対象に最大5千ポンド(約66万円)を支給しています。ボランティア精神や自助の原則に基づいた、小規模な地域密着型の取り組みを優先的に支援し、礼拝に来る人から募金を集めていますが、今は誰も教会に行けないのでオンラインのチャリティ募金という方法を利用しています。
ビジュアル・アーツ・アソシエーション・オブ・スコティッシュ・アーティストは、このパンデミックのまっただ中で先の見えない不安や失業に苦しむアーティストのために基金を設立しました。また、ビジュアル・アーツ・オブ・スコットランドは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたアーティストを支援するための一時的な救済基金として、芸術家のための緊急支援基金(EAWSF)を立ち上げています。
- 2020.05.22
- スコットランドの新型コロナウイルス感染症緊急事態への対応