• 2020.08.20
  • シュマン・デュ・ロワ(王の道)
旅が大好きな私ですが、スコットランドではハードな体験をしましたし、隣国アメリカとの間でさえも国境が閉ざされたことを考えると、今年は旅をするとなるとカナダ国内、そして車での旅行に限ることになるでしょう。
ケベック州のモントリオールを訪ねた後、シュマン・デュ・ロワ(王の道)へ発見の旅に出かけることにしました。

シュマン・デュ・ロワは歴史ある街道で、カナダの2つの重要な都市であるモントリオールとケベックシティを結んでいます。この街道はケベック州の歴史、ルーツ、そして「新フランス」としての誇りをたどる道程なのです。
18世紀初頭、道路網は広大なヌーベルフランス(1534年~1763年にフランスが北アメリカに植民を行った地域)のごくわずかな部分に張り巡らされていただけで、小さな道路があちこちに散らばって延びていましたが、州都ケベックシティからモントリオールに繋がる幹線道路はまだありませんでした。
家屋が建ち並ぶ区域に、川に沿って道路を建設することを評議会が決めたのは1706年のことでした。

1世紀半ほどの間、郵便配達人や旅人が馬車や乗合馬車、そして冬にはそりでこのシュマン・デュ・ロワを利用し、休憩できる場所も数多くありました。

街道と川はいつでも並んで走り、ケベック州の歴史において重要な幹線となっています。素晴らしい景色や、ヌーベルフランス時代から21世紀にかけてのフランスの伝統や歴史がしみ込んだ文化遺産も目にすることができます。
おかしく思われるかもしれませんが、かつてヨーロッパの一部だったという過去への愛着はとても強く、心からのその思いは、今もなお確かに生き続けているのです。1600年代から残る古い建築は然るべき形で保存され、貴重な歴史的資産となっています。
フランス語を公用語とする2大都市であるモントリオールとケベックシティですが、いくつか違うところがあります。どちらも文化的に活気があり現代的ですが、モントリオールの方が圧倒的に国際色豊かで、新しいものを進んで受け入れる未来志向の街です。一方、ケベックシティはもっと観光的で歴史との繋がりが深い街。2つのうちのどちらかを選ぶのは難しい・・・私は両方とも大好きです!
特にケベックシティの歴史地区では、パリのモンマルトルを彷彿させる通りや素敵な小さな店など、イギリスの風味も合わさったフランスの魅力に触れることができます。とは言え、市街地にある大きな公園、さらにはシタデルや戦場公園を訪れると、規模的にもヨーロッパから遥か遠く離れていると感じずにはいられません。どこまでも広がる空間と景色は、カナダならではですね。

ケベック州はとてもユニークな地域なので、初めは疎外感を味わうかもしれません。北米は英語圏だという考えに慣れていますが、コミュニケーションを取るためにはフランス語を話す努力をする必要があり(特に小さな町では、人々が英語を話せるかどうかも明確ではありません)、カナダの他の地域との違いを実感することになります。でも、この少しのヨーロッパと少しのアメリカ的な要素、そしてなにより独特の魅力を持ったケベックと恋に落ちるにはそれほど時間はかからないでしょう。

耕作地や果てしなく続く道、そして無限の森が、とても心地よく広がっています。この圧倒的な自然の中では、人間は日々繰り広げられる壮大な舞台でほんの小さな役割を担っているにすぎません。

フランス人によって作られたモントリオールとケベックの街を繋ぐ初めての道、シュマン・デュ・ロワに沿って、素敵な住宅や堂々たる教会(前者は一般的には木造で、後者はほとんどが石造建築)が200キロに及ぶ街道沿いに連続的に建ち並んでいます。どれもみないつも美しく手入れされ、青々とした庭や公園に囲まれています。冬になって、訪ねた場所が雪化粧されている時に同じ道程をたどりたいなと思っています。
街道に沿って流れる大きな川の北岸を走るシュマン・デュ・ロワの目印は、王冠マークのついた青い標識です。手入れの行き届いたテーブルやトイレを併設する公共エリアも数多くあり、街道沿いのスーパーではピクニック用に調理済みの食品も販売されています。この道は、快適な上に道沿いに休憩所もあるため、サイクリストやバイカーもよく利用しています。

海岸沿いの道に出ると、小都市と広大な農地が交互に現れ、数キロ進むだけで景色は劇的に変化します。森は、この領土の王様なのです。


ケベックシティ

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

パトリック・ サッコの記事一覧を見る

最新記事

リポーター

最新記事

PAGE TOP