• 2021.05.31
  • ママに優しくない国
この国は子どもを持つママたちに優しくない・・・。
ある友人は、「アメリカは0~4歳児を持つ母親にとっては優しい国じゃないのよ」と繰り返し言っていましたが、カナダも同様だという意見を度々耳にします。
子どもをもうけるにあたり、様々な面でカナダが理想的な国であることは間違いありません。カナダにはたくさんの緑地や持続可能な都市(サステイナブル・シティ)がありますし、子どもたちが空き時間に遊んだりスポーツをしたりするために整備された場所も多くあります。これらは子どもがいる家族にとって大きなメリットですし、お手頃価格で受けられる医療制度も整っています。
ところがどっこい、これほど文化が発達した国でこんなことがあるとは想像もつかず、知った時には非常に驚いた事実があります。なんと、この国には0歳から4歳児向けの公立のプリスクール(幼稚園入園前に通う施設)がなく、保育園やその他の乳幼児向け保育施設も存在しないのです。
さらに、私立のプリスクールはありますが、こちらは非常に高額で、週に5日通うとなると子ども1人につき1か月あたり1,200~1,500ドルかかるようです。
私の母国イタリアでは、公立のプリスクールは子ども1人あたり月100ドル程度を食事代として払うだけ、私立でも食事代を含めて最大で月400ドル程度でした。
こういった状況によってカナダではどんな変化が起きているでしょうか?
何人かの友人に尋ねてみたところ、こんな返事が返ってきました。
第一に、専業主婦(レアケースですが「専業主夫」の場合も)の数が増えていることが挙げられます。つまり、幼い子どもを持つ女性(または男性)は、子どもが幼稚園に通い出す4歳になるまではキャリアの一線から退き、子育てに専念することを選んでいるのです。
幼い子どもが2人か3人いる家庭(カナダの一般的な家族構成)にとって、子どもたちにかかる高額なプリスクールの費用を稼ぐために働くのは割に合いません。それに見合うだけの高い収入が得られるのは、一定レベル以上の専門職など一部の人に限られるでしょう。
私立のプリスクールに通う代わりにベビーシッターを雇うという手もあります。
とはいっても、こちらも多額の出費を伴います。
平日に2歳から4歳の子ども2人をシッターに預ける場合、ひと月の費用は最大2,000ドルにもなります。
キャリアを続けるか子どもをもうけるか、どちらかを選ばないといけないなんて、不公平ではないでしょうか。ましてや政府はこの点では国民を助けてはくれないのです。
カナダでは保育サービスを受けられる人と受けられない人の間の経済的・社会的格差が広がっています。
私の母国イタリアでは、家族(叔母・伯母、祖父母に加えて近所の人までも!)の強力なネットワークで働く両親をサポートしていましたが、ここカナダでは祖父母の助けを得られる人はごくまれで、そのためプリスクールによるサポートは両親にとっては重大な問題なのです。
子どもを持つ女性の中には、私に「ヨーロッパに移住したほうがいいと思う?」と尋ねる人までいました。
そうはいっても、ヨーロッパにはプリスクールの問題はないとしても、カナダでは見られない問題が山ほどあるのですが・・・。その最たるものは失業率の高さです。
カナダの雇用率は非常に高いので、両親が数年間キャリアを断念しても、仕事の世界に戻ろうと思えばまた職を得ることができるでしょう。
カナダの教育機関には、アメリカと共通の不安視すべき点があります。
ここカナダでも最近、一部の例外を除いて、質の高い教育は私立学校の特権となってきているのです。
一般的に私立の小学校から高校にかかる学費は、保育園に比べると安価(公立学校との競合によって価格はリーズナブル)なので、保護者の多くは音楽、芸術、数学などの特別なカリキュラムがある私立学校を選びます。
公立に比べて生徒数も少なく、教師陣はより細やかに生徒に目を配ることができます。「私立学校は社会的環境が良い」という長所にも短所にもなり得る意見もよく耳にします。
今回は読者の皆さんに友人のレイチェルのコメントを紹介して、「カナダは母親(もしくは父親?子どもたち?)にとって優しくない」という考察を残すだけのブログとなってしまったかもしれませんが、最後までお読みいただきありがとうございました。

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

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