• 2023.09.01
  • アメリカで物議を醸す映画『バービー』
世界で最も有名な人形「バービー」は、1959年にロサンゼルスで誕生しました。
その誕生から長い年月を経て、今年ついに映画『バービー』が劇場公開されました。映画界の救済という「インポッシブルなミッション」に対してトム・クルーズ以上に貢献していると評判になっています。
私はアメリカにそれほど長く暮らしているわけではありませんが、こんなにもたくさんの人が映画館で列に並んでいるのを見たのは初めてです!

興味もあったし、友だちに感化されたこともあって、私もこの映画を観に行ってきたのですが、『バービー』はまさに真のエンターテイメント作品と言えます。コメディー映画とミュージカル、強盗映画の要素が混ざり合い、カラフルではちゃめちゃ、そして最高に楽しくて笑える映画でした。
作品の中で扱われているいくつかの主要なテーマについては「フェミニズムが強すぎる」、「差別的」、「低俗だ」と受け取る人もいます。ですが、誰よりも映画『バービー』に最も劇的な反応を見せたのは、この作品に対して想像力あふれる言いがかりをつけたアメリカの保守派政党でした。
この映画は政治的な議論も巻き起こしています。劇中に登場する南シナ海の地図に中国が主張する「九段線」が描かれていることから、ベトナムでは上映が禁止されました。南シナ海はベトナムや台湾、マレーシアなど複数の周辺国が主権を主張している海域です。
個人的には大げさに騒ぎすぎではないかと思うのですが、この件は共和党のトップ議員たちが「映画『バービー』は中国のプロパガンダを支持する作品だ」と発言する事態を招くこととなりました。

この映画が大人気を博しているのは、もちろんバービー人形の名声による部分が大きいのでしょうけれど、映画界が革新的で若さあふれる「斬新なストーリー」を求めていたのも事実ではないでしょうか。

映画『バービー』は地政学的なトピック以外にも問題を引き起こしています。映画のセットの制作に膨大な量の蛍光ピンクの塗料を使った結果、一時的に世界中でピンクの塗料が品切れとなったのです。まさに「世界のピンクを使い果たした!」というわけですね。

一方で、アメリカの経済は映画『バービー』が描く世界観を追随しているように感じます。ピンク一色のバービーの世界のように、誰もが消費に興じているのです。今日、アメリカ人はかつてないほど「物を買いたい」という欲求が高まり、物価の高騰にもお構いなしです。簡潔に言えば「消費」と「適応力」です。消費欲と、明らかな物価高騰に対する適応力が融合したのです。
これはコロナ禍の反動として生まれた「今を楽しもう」という考え方で、アメリカの人々の新たな行動パターンを特徴づけています。

そして、見た目をバービー人形に似せようと美容整形を受ける人も増えているそうです。
この危険な現象は、複数のメディアで「リアルバービー」が取り上げられたことで明るみに出ました。
専門家によると、特に幼少期に長期間にわたってロールモデルと接していると、その人のようになりたいという欲求が生じるとのこと。自分自身のアイデンティティーを見つけたり、個性を伸ばしたりすることは多くの人にとって難しいことも相まって、一部の人の選択や決断に影響を与えることがあるようです。

アメリカでは、バービー人形は非常に重要な存在で、莫大な量のバービー人形を収集するコレクターも多いし、大会や人形を交換するイベントも開催されています。さらには、映画に登場するマリブ・ドリームハウス(場所はもちろんマリブ!)に宿泊することだってできるのです。
私はバービー人形のファンではありませんが、この玩具がアイコン的存在であり、私を含む多くの人々が成長過程で一度は夢見る「金色のアメリカンドリーム」を象徴する人形であることは認めざるを得ません。
バービーのルックスは時代ごとに変化しています。多様性と公平性を尊重し、現在では様々な人種や民族、特徴を持つバービーが販売されています。

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。イタリアからスコットランドへ移住し、2022年4月にアメリカのテキサス州オースティンに引っ越してきました。
仕事は土木技師、趣味は詩を書くことです。時間のあるときはドライブをして新しい場所を発見するのが好きです。
アウトドアが大好きで、キャンプやハイキングにもよく行きます。
この新たな土地でたくさんの友達をつくって、みなさんにもこの街のことを知ってもらえればと思います。

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