この問題は、食品の「スーパーサイズ化」と深く関係しています。アメリカの飲食店で出される一人前の食事は非常に量が多く、これが欧米諸国(最近では発展途上国でも)で肥満が蔓延している主な原因のひとつと考えられているからです。
食品表示への関心は高まっていますが、例えばカロリー摂取量が、実際に食べる量よりもずっと少ない量を基準に表示されていることに気づかない場合もあります。その結果、知らないうちにラベルに記載されている量の2倍から3倍ものカロリーや脂質、塩分を摂取してしまうのです。
ラベルにはなんともおかしな量に相当する成分が表記されていて、一見すると砂糖や脂質の量、カロリーが低く見えてしまう場合があります。例えば、ポテトチップス10枚あたり、クッキー1枚あたりの成分が記載されていたりするのですが、一体誰がクッキー1枚で満足したり、チップスを5枚食べただけで手を止めたりするというのでしょう? 実際の摂取量は掛け算で算出する必要があり、表示を見るだけではわからないのです。
アメリカで出される一人前の料理は、栄養士が推奨する標準量に比べて最大8倍も大きいのだとか。
ファストフード・チェーンの多くはスーパーサイズのハンバーガーや大盛りポテト、まるでバケツのようなサイズのドリンクを提供しています。一方、ファストフード以外の飲食店も、どうやら「大きければ大きいほど良い」と考えているようです。
スーパーに行けば、ケージで飼われた鶏の卵24個が放牧飼育のオーガニック卵6個よりも安いことや、砂糖を加えた果汁2%のフルーツジュース1ガロン(約3.8L)が14オンス(約400ml)のオレンジジュースよりも安価に売られていることもしょっちゅうです。
レストランで長年はびこってきた食品ロスをくい止めるのに最も簡単で効果のある方法が「ドギーバッグ(doggy bag)」の使用です。
ドギーバッグとは、文字通りには犬に食べ残しを持ち帰るためのトレイを意味します。レストランやカフェでの深刻なフードロスの問題を回避するのに役立つ、簡単で効果的、そしてすぐにでも実践できる取り組みです。実際、飲食店では顧客がオーダーした食べ物の最大50%が残され、まだ食べられるのに廃棄されています。ドギーバッグを利用する人たちは「犬に食べさせるため」という建前で残り物を持って帰るのですが、たいていは家庭で作った料理の残り物と同様に、翌日に自分たちで食べています。
アメリカでドギーバッグが導入され始めたのは1940年代のこと。私の知る限りでは、このすばらしい食品ロス対策を最初に採用したのがシアトルとサンフランシスコでした。シアトルでは、レストラン経営者たちが連携して、残り物を入れて家に持ち帰るためのパラフィン紙製の袋を顧客に提供し始め、成功を収めました。
一方のサンフランシスコでは、とあるカフェがペットのために残り物を持ち帰りたい客に向けて小さな容器を提供するようになりました。
アメリカでは一人前が非常に大きいため、レストランを訪れる客のほとんどは料理を食べきることができません。
残り物を家に持ち帰ることを「恥ずかしい」と思う気持ちを乗り越え、誰もがドギーバッグの利便性を理解すべきだと思います。
食品ロスを減らす有効な手段である一方で、ドギーバッグとして使われるプラスチックや発泡スチロール製の容器がまた別のごみ問題を引き起こしているというのも事実です。
また、アメリカ人は一律料金で好きなだけ食べられるビュッフェ形式の食事やビュッフェレストランが大好きなのですが、こうした場所では当然ドギーバッグは使用できません。そうしないと、翌日に食べるため、あるいは誰かに食べさせるために持って帰る人がいないとも限りませんからね。