そのため、チェーン店の返品・交換カウンターには常時長い列ができています。
購入した商品を自由に返品できると、顧客は「返品できるからいいや」と考えてより気軽に購入するようになりますし、実際にアメリカ人の友人たちがそんな風に話しているのを何度も耳にしました。
結局のところ、店にとっては商品が全く売れないよりは返品されるリスクを負ってでも売れる方がいいのでしょう。ですが、簡単に返品できるのは主に大型小売チェーン店や有名ブランド店、デパートだけではないでしょうか。
地元の小さな家族経営店舗では、より厳格な規制を盛り込んだ、大手とは異なる返品ポリシーを適用していることでしょう。
この国で暮らすイタリア人は、「要らないから」という理由だけで商品を返すことができるなんて思いもしませんし、私もアメリカで暮らし始めて最初の数か月間は返品制度を利用したこともありませんでした。
その後、何年か暮らすうちに何度か返品をしたのですが、店の担当者からネガティブな言葉や態度が返ってくることは一度もありませんでした。
返品したのは、贈り物に同じものを二つ購入してしまったとか、サイズを確認せずに靴下を買ってしまった、といった理由でした。結婚式に出席するために一度だけ着用した靴を返品したこともあります。気に入っていたので手元に置いていたのですが、あまりにも靴擦れがひどかったからです。
後日、レシートも持たずにその靴を返品しに行き、謝ろうとしました。店員が言うには、その靴は履き心地が悪いため、私以外にも返品した人がいたそうで、不良品みたいなものだ、とのことでした。
私の彼女も一度使ったクリームや化粧品を返品したことが何度かあります。敏感肌なためクリームが肌に合わないとすぐにわかるし、香料が頭痛を引き起こすこともあるからです。化粧品は安い買い物ではないので、返品するのだそうです。
そして、食品までもが返品可能なのです。理論上は、購入した商品が消費期限前に悪くなった場合は返品することができます。
中には、洋服のタグを付けたまま服の中に隠して一晩着用した後に返品し、あたかも無料のレンタル衣装のように利用する人もいるようです。当然ながら、これは軽犯罪すれすれの不当な行為です。
簡単に返品ができると、こうしたマイナス面も生じます。選択肢を増やすために商品を購入し、ため込んでおいて返品する、という行為はイタリアでは考えられません。
複数の商品を購入して、家に持ち帰って比較する、というのがアメリカ式大量消費スタイルです。あなたはこれをどう感じますか?
アメリカでは、寛容な返品ポリシーは、商品を購入した顧客が期待するハイレベルな顧客サービスの一部と見なされていますし、カスタマーサービスと「お客様は神様」という考えはアメリカの消費者文化に深く根付いています。
悪態をつく顧客の機嫌を取るために、無料サンプルや割引などの特典を与えている場面を目にすることがありますが、これはやりすぎですね。