その名も パン・コン・チチャロン(Pan con chicharrón)。直訳すると「チチャロン(豚の皮付き揚げ肉)のパン」。名前はシンプルですが、その味は奥深く、地元の人々に長年愛され続けてきたボリュームたっぷりの朝の定番メニューです。
パン・コン・チチャロンってどんな料理?
パン・コン・チチャロンは、豚バラ肉(皮付き)をじっくりと揚げた「チチャロン」を、外側はカリッと中はフワッと焼き上げられたパンに挟んだサンドイッチです。これだけでも十分おいしいのですが、さらに味と食感のバランスを整えるために、サツマイモを薄く切った素揚げ(カモテ・フリート)や、玉ねぎとレモンを使ったマリネが添えられるのが一般的です。
この組み合わせが絶妙で、ジューシーで香ばしい豚肉のうま味に、ほんのり甘いサツマイモがやさしく寄り添い、シャキッとした玉ねぎの酸味が全体を引き締めます。パンは軽めのものが多く、チチャロンの油分をしっかりと受け止めてくれるので、朝からでもぺろりと食べられてしまいます。
ペルー人にとって「休日のごちそう」
このパン・コン・チチャロンは、特に休日の朝食としてペルー人の間で親しまれています。リマの街を歩けば、朝早くからチチャロン専門店の前に人が並ぶ家族連れの姿も珍しくありません。
日曜日の朝にレストランで食べたり、テイクアウトして家に持ち帰って温かい飲み物と一緒に楽しんだりするのが、ペルーの休日の風景です。ペルー人にとっては、「ちょっと特別な家族との朝」に食べるもの。幸せな家族団欒のシーンに欠かせない存在のように思います。
観光客にも大人気
この地元の味は、世界最高の朝ごはんと報じられたこともあり、観光客の間でも近年ますます人気を集めています。リマを訪れたら、旧市街やバランコ、ミラフローレスといったエリアに、パン・コン・チチャロンの名店が数多くあります。
たとえば、創業1940年代の老舗「El Chinito(エル・チニート)」は地元民にも観光客にも大人気で、肉厚なチチャロンと、クセのないサルサのバランスが評判で、朝から行列ができることもしばしばです。
私が個人的にとても気に入っているのが、リマにある「Chicharrones del Inca(チチャロネス・デル・インカ)」。名前からしてもう美味しそうですよね?「インカのチチャロン」と名付けられたこのお店は、伝統を大切にしつつ、豚肉の部位や揚げ方にこだわった一品を提供してくれます。カリカリ&ジューシーの二刀流。
サルサ・クリオージャの酸味と、サツマイモの甘みも計算されたかのように絶妙で、思わず「……うまっ!」と声に出てしまったほどです。一口頬張ると、もうこの上もなく幸せな気持ちになります。
一緒に飲むなら?
パン・コン・チチャロンには、ペルーならではの飲み物がぴったりで、おすすめしたいのが紫トウモロコシから作られるジュース「チチャモラーダ」。さっぱりとしていて、ほんのりシナモン風味。脂のある料理との相性は抜群でぐびぐび飲んでしまいます。
ペルーの食文化を朝から体験
パン・コン・チチャロンを「家族と一緒に楽しむ」文化は、ペルー人の家族を大切にする温かさを物語っているように思います。旅行中の朝、少し早起きして、街角のチチャロン屋さんにぜひ一度足を運んでみてください。紙包みからはみ出すチチャロンを頬張りながら飲む一杯のチチャモラーダは、思い出すだけでよだれが出るそんな最高な時間になるはずです。それではこのあたりで、アディオ〜ス!南米ペルー、イカ州パラカスより、山本粧子がお届けしました。
