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  • 2019.08.06
  • プラド通信
今年、開館200周年を迎え様々な企画が目白押しのプラド美術館で先日からまた一つ独創的な特別展が始まりました。


展覧会場入り口展示『ベラスケス・レンブラント・フェルメール、それぞれの視点』

美術館や展覧会で芸術作品を鑑賞するときには一つの作品の全体や細部を見て、また次の作品へ移るのですが、今回の展覧会は複数の作品の間を行きつ戻りつ、矯めつ眇めつして表現技術やテーマのみならずその時代の風俗、習慣等々を比較しながら相違点や類似点を発見する楽しみを提供する企画です。

さてその比較対象になったのは、17世紀のオランダ絵画と同時期のスペイン絵画。スペインでは“黄金世紀”と呼ばれ主に美術、文学の面で隆盛を誇った時代です。昨年東京と神戸で開催された“プラド美術館展”のまさにメインテーマでした。一方、若干遅れてオランダにも”黄金時代“がありました。16世紀から17世紀にかけて戦われた80年戦争後スペインから独立したオランダが美術のみならず科学技術、軍事、貿易、海運などで世界をリードした時代です。

この二つの国の絵画については、17世紀オランダを代表する画家としてレンブラント、フェルメールなどが最もオランダ的であり、一方スペインではベラスケス、スルバラン達がスペイン精神の発揚であるとも言われて、しばしば対極関係と捉えられていた時期もあったようです。しかしこの比較展では戦争に分断された両極端の国々が実は芸術活動や社会生活においては多くの共通点があり、それぞれ独自に発展していたように見えながら現実には汎ヨーロッパ的な同じ流れの中にあることを提示しています。その開催趣旨に適した両国代表作を36点づつ選び合計72点の規模になりまた。

プラド美術館所蔵作品と並べられるのは、アムステルダム国立美術館を始め、ロンドンのナショナル・ギャラリー、ニューヨークはメトロポリタン美術館、オランダのマウリッツハウス美術館などからお借りした作品です。


展覧会パンフレット

左 ベラスケス作“メニッポス( 古代ギリシャ犬儒派の哲学者)” プラド美術館蔵
昨年日本で開催されたプラド展にも出展された作品です。
右 レンブラント作“聖パウロ使徒の姿の自画像”アムステルダム国立美術館蔵
双方とも理想化された哲学者、聖人ではなく実在する市井の人の姿に描かれています。


二つの風景

左 ベラスケス作 “ローマ、ヴィラ・メディチの庭園”プラド美術館蔵 48.5x43㎝
右 フェルメール作 “小路(デルフトの家々)”アムステルダム国立美術館蔵54.3x44㎝
ベラスケス(1599~1660)とフェルメール(1632~1675年)は同時代の画家ながら、ベラスケスはスペイン宮廷付きの画家、美術責任者として数多くの名作に接し、芸術の原点であるイタリアへも2度ほど美術品買い付け旅行に出かけて見聞を深めていました。一方、フェルメールは43歳で亡くなるまで生まれ故郷のデルフトをほとんど離れることがなかったということで、二人の間には行動半径、制作環境に圧倒的な違いがあります。


ところが、ほとんど同時代に描かれたこれらの二作品、双方ともこれといったテーマもなく、当時の日常の風景をスナップショット的に切り取っていて、飾り気のない建物の剥げかけた壁面や自然にたたずむ人物達、木々のざわめきや街の生活音まで聞こえそうな描写の相似は両画家を取り巻く社会生活環境の違い、画家としての生業の差、物理的な距離などを一瞬で消し去ってしまうようです。

蛇足ながら上記のごとく、絵の大きさもほぼ一緒。展覧会の趣旨にそって並べて展示してありますので見る人は行ったり来たりとお忙しい限りでした。マドリードを訪れる機会がありましたら、是非ともこの稀有な展覧会をお見逃しなく。アムステルダムとマドリードを行ったり来たりする手間がはぶけます。

ちなみに通常プラド美術館で拝見できるレンブラント作品はただ一点のみ。


レンブラント作『ホロフェルネスの宴会に於けるユディット』プラド美術館蔵。鉛白顔料を使って絵具を盛り上げる技法が遺憾なく発揮された作品と言われています。プラド美術館のHPより。


『ベラスケス・レンブラント・フェルメール、それぞれの視点』 
『Velázquez,Rembrandt,Vermeer MIRADAS AFINES』
会場 国立プラド美術館・マドリード
会期 2019年6月25日~2019年9月25日

プラド美術館 展覧会紹介HP
https://www.museodelprado.es/actualidad/exposicion/velazquez-rembrandt-vermeer-miradas-afines/7ca4f41d-c9d1-2615-8a81-e2d017ab9757

追加オランダ情報
アムステルダム国立美術館では没後350周年を記念し今年2019年をレンブラント・イヤーとし、様々なイベントが企画されています。その中の一つが『レンブラントとベラスケス展』です。こちらも両国を代表する
2大巨匠を軸に17世紀のオランダ絵画とスペイン絵画の比較展となりますので、マドリードで見逃したらアムステルダムで再会できます。

『レンブラントとベラスケス:オランダとスペインのマエストロ達』
『Rembrandt-Velázques:Dutch and Spanish masters』
会場 アムステルダム国立美術館・フィリップスウィング
会期 2019年10月11日~2020年1月19日 
アムステルダム国立美術館 展覧会紹介HP
https://www.rijksmuseum.nl/en/whats-on/exhibitions-expected/rembrandt-velazquez-dutch-and-spanish-masters

特派員

  • 山田 進
  • 年齢寅( とら )
  • 性別男性
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

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