• 2024.11.29
  • 犬派?猫派?
1819年、それまで王室が所有していた絵画作品311点の一般公開から始まったプラド美術館、現在は絵画をはじめ彫刻、デッサン、版画、宝飾品、写真、家具などを保有総作品数3万5千点余りに上る総合的なミュージアムとなりました。この美術館の始まりである絵画コレクションも2017年時点での所蔵品目録では8015点に増えています。その中で気になったのは日本でもペット人気を二分する犬と猫が描かれている絵画の数はどちらが多いのかなというしょうもない疑問でした。

そこで秋の夜長の徒然に公式HPで検索をかけると登場回数が最も多い動物は1182点の絵画に描かれている馬でした。コレクションの初期の特徴として王室のメンバーや貴族、要人の肖像画が多く騎馬姿で威厳をしめす構図が好まれたのでしょう。さて犬猫問題ですが、犬の登場は931作品、そして猫が参加している絵画は78点と犬派の圧倒的勝利?でした。それにしても美術館所有全絵画中1割以上の作品に犬が描かれているとは驚きですね。

そしてこの犬が描かれている代表作と言えばプラドの至宝とも言える、ベラスケス作『ラス・メニーナス(女官達)』別名『フェリペ4世の家族』ではないでしょうか。プラド美術館のメインホールの一等地に掲げられているこの作品、1819年開館以来200年余りの間美術館を出たことのない(*)最古参の一人です。
(*)例外として1936年~1939年のスペイン市民戦争中は戦火を避けバレンシア、バルセロナ、を経てスイスへ疎開していた時期があります。戦禍が収まった1939年9月再びマドリードへ帰還しました。


画像1

この作品はフェリペ4世陛下が公務の最中でも常に家族と一緒に居られるようにと執務室に掲げるために宮廷の首席画家のベラスケスに描かせたものだそうです。愛娘や女官、侍従などは理解できますが、ペットの犬まで家族と思っていて、付けられた名前はSalomón ソロモンだったそうです。ちなみのこのワンちゃん、犬種としてはスペイン語でMastín Español 英語ではSpanish Mastiff です。日本では土佐犬が日本マスティフと呼ばれています。
画像1.がフェリペ4世家族集合作品『Las Meninas ラス・メニーナス』です。


画像2


写真1

犬猫関係を探っていると今話題のデコピン君の祖先らしきお姿も発見しました。画像2.で『犬達に追われるカワウソ』で先頭を切ってカワウソに向かっているのがスパニエル犬のKooikerhondije コーイケルホンディエでしょう。流石にお仕事中なので厳しい顔つきをしていますね。英語名がDutch Decoy Spanielなので大谷さんがデコイにちなんでデコピンと名付けたと思います。作者はピーテル・ボエル17世紀アントワープの画家です。16世紀から17世紀にかけて現在のオランダを含むフランドル地域での狩猟、それも特に鴨猟で活躍したのがこの犬種、ふさふさした尻尾を高く掲げて鴨をおびき出すところから“おとりの鴨”decoyの名が付けられました。写真1は木彫りのデコイです。


画像3

さて次は猫ですが、上記と同じくベラスケスの大作、画像3の『アラクネの寓話・織女達』には猫が登場します。この絵は手前と奥で2つの場面に分かれていて、壁掛けや絨毯を制作するタペストリー工場の内部で糸を紡ぐ女性達の動きのある手前の場面。そして出来上がった作品を展示している奥の部屋です。そちらでは機織りの腕を自慢しすぎたアラクネという女性が女神アテナの逆鱗にふれ生涯糸をだして織り続ける蜘蛛に変えられてしまったとい言う神話が語られているそうです。ここでは手前に猫が登場します、床に一匹、そして糸弾き車を回す女性の膝クロネコらしき影が見えるとの穿ったご意見もありますが忙しく動いている車の前でじっとしていられるものでしょうかね。

『ラス・メニーナス』には御主人に忠実な犬が、『アラクネの寓話 織女達』には自由闊達マイペースな猫が登場します。17世紀のスペインでもペットの代表各は犬と猫だったのかな。


画像4

おまけ:画像4は私の好きなプラドの猫『Cabeza de gato durmiendo眠り猫の顔』です。

特派員

  • 山田 進
  • 職業スペイン語・日本語通訳

スペイン政府より滞在許可と労働許可を頂き、納税・社会保険料納付をはじめて早37年。そろそろシルバー人材センターへの登録も視野に入った今日この頃、長い間お世話になったこの国のことを皆様にご紹介できることを楽しみにしています。

山田 進の記事一覧を見る

最新記事

おすすめ記事

リポーター

最新記事

おすすめ記事

PAGE TOP