それにしてもスペインはなぜに“黒潮”。これは大航海時代に隣国ポルトガルと世界の海洋覇権を二分したスペイン帝国にとって日本、ひいては東アジア圏との結びつきの歴史に欠かすことのできない海流だからなのでしょう。
フィリピンのルソン島海域から北上し台湾沿岸を通過して日本近海で東へ向かいアメリカ大陸まで到達する壮大な海流を見つけたのがスペイン人冒険家のアンドレス・デ・ウルダネータ修道士で、1565年スペイン領になりたてのフィリピンからメキシコ、当時のヌエバ・エスパーニャへ帰還する際に発見したとも言われていてtornaviaje 旅の帰り道と名付けました。この航路の始まりの部分が日本近海を北上する黒潮です。ウルダネータさん以来250年ものあいだ、ガレー船が行き交いメキシコを経由して多くの富がスペインとアジアを行き来しました。図1が北太平洋巡回航路です。

図1
ヨーロッパへ渡った初めての日本人は1582年の天正少年遣欧使節団といわれていてその航海は日本からインド・アフリカ経由の西回りでしたが、次の支倉常長率いる慶長遣欧使節団は1613年、東回りの黒潮・tornaviaje 航路を使い、メキシコ経由でヨーロッパへ到着しています。このようにスペインと日本の結びつきを海流、ひいては海、そして一時は『太陽の沈まない国』と呼ばれたスペインと『日の出る国』である日本との共通項である太陽をダイナミックに表現したのがスペイン館の入り口です。写真2と写真3はその昼と夜です。海から昇る、そして海へ沈む太陽と大海原ですね。

写真2

写真3
今回の展示はまず日本との歴史的関係物の展示からスペインの海洋資源に対する取り組みを紹介し、飲食関係ではスペイン物産の展示即売が行われています。またレストランでは写真4と5の様にスペインを構成するイベリア半島の17州とアフリカ大陸北岸の2自治都市のご当地グルメが手軽なピンチョス・タパス形式で提供されているスペイン全州まとめて一気に制覇セットもあるそうです。

写真4

写真5
ここで目を引いたのはバレンシア州のご当地グルメ、てっきり日本でも市民権を獲得したパエージャかと思いきや、なんとバレンシアのソウル・ドリンク Horchata オルチャータでした。白濁した一見濃いめの米のとぎ汁か豆乳のような外見で、原料はchufaチュファと呼ばれる植物の地下茎です。スペインでもバレンシア州以外ではそれほどポピュラーではなく、日本ではなかなか味わえないソフトドリンクなので機会があればぜひご賞味あれ。