• 2018.03.07
  • 習慣
外国人にとても友好的なイタリア人。イタリアに来たばかりの頃、イタリア語がよく解らない日本人の私をイタリア人社会に溶け込ませてあげようと、アペリティフに、映画に、友人で集まる夕食会に誘ってくれたりなど、実にフレンドリーで有難いジェスチャーをしてくれました。

が! 招待に感激しているのも束の間、予想以上の困難に直面します。例えば友人達の夕食会などでは、イタリア語が解らない私を気遣って、私を中心に質問が飛び交い、私のための通訳作業も丁寧に行われる社交辞令的な最初の1時間。

その1時間が過ぎると、イタリア語が解らない人は完全に置いてきぼり。皆が盛り上がって笑い転げている途中で「解らない単語は遠慮なく聞いてね!」ニッコリと私に言ってくれる親切なイタリア人。でも、解らない単語だらけ、、、

仕方がないので料理してくれた美味しいイタリアンパスタをほお張り「Buono美味しい」を連発すると、「イタリアン料理は最高でしょう?」とその場のイタリア人達全員が、がっついて食べている私を見てとても嬉しそうに誇らしげに言う。それだけでは、だんだん場が持たなくなるので、イタリアンワインにも舌鼓を打ち「Buono美味しい」とその場に参加しているかのような効力のあるこの魔法の言葉を連発、、、そしてワインの御代わりを注いでもらっているうちに、イタリア語が解らず会話についていけない困惑的なシチュエーションはどうでもよくなってくるのですが、そのせいかイタリア人の間では、私は食事に情熱を燃やしていると思われてしまって、随分と長い間「あなたは、食べる事が大好きなのよね!」と思い込まれて閉口した覚えが、、、

そういう集まりの席で、私が食べ疲れて飲み疲れて全くついていけないイタリア語会話にも疲れた頃にやってくる恐ろしい習慣がありました。それは、バルゼレッタBarzelletta笑い話の時間。

「え?もしかしてまだ家に帰っちゃいけないの?」と何度思ったことか、、、実際、イタリア人の本当のお楽しみの時間は、バルゼレッタの時間のここから。短い笑い小話のお披露目のしあいっこが実はメインイベントで「これ知ってる?え?知らない?じゃぁ、、、」と得意げにバルゼレッタを表情豊かに語ってくれるのです。

語学の問題のある私のために訳してくれる本当に親切なイタリア人!けれど、イタリア人全員がドッと笑った後に、私のための通訳バージョンの時があるわけで、食べ過ぎ飲み過ぎの私は集中力散漫なのに注意深く聞いてあげて、最後のオチのところで一人で大笑いしなくてはなりません。しかもその場のイタリア人全員が私のリアクションを観察し、オチでどれくらい笑うかを待って呼吸さえも止めているような瞬間。バルゼレッタの時間は私が予想している以上に長くて、重い任務なのでした。2、3個の笑い話を披露して大笑いしてお終いになる?とんでもない!! 1、2時間くらい続くのです。

「もういい加減にしてぇ、、、」と言わんばかりの疲れて飽きた表情を私が見せると、私を退屈させてはいかんと「日本にはバルゼレッタは無いの?あるでしょ?日本のジョーク話だよ。聞きたい」と今度は私に話題を振り、解放してはくれない。「日本には、イタリアのような笑い小話は無いよ。落語とかコントっていうプロの人が語りながらオチをつけてお客を笑わせる芸はあるけどね。あとは、、、」と説明していても誰も聞く耳持たず「聞きたい!聞きたい!」の連呼攻撃。

イタリア在住20年過ぎた今、バルゼレッタはだいぶわかるようになって来たものの、それでもイタリア人達と同時に笑えるほど理解力が速くないので、大抵は一拍遅れて笑います。

で、よくよく考えてみると私自身がバルゼレッタのネタではないですか!


特派員

  • 三上 由里子
  • 年齢戌(いぬ)
  • 性別女性
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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