• 2018.06.19
  • スピード
前回の出だしにも書きましたが、イタリアはキリスト教国。それゆえに、日曜日は安息日。土曜日も日曜日も学校や会社はお休み。連続二日間の休日があるなんて、さぞかしリラックスした生活を送れることでしょう、と思われるかもしれませんが、不思議なことに実際はかなり慌ただしい7日間を送っていることに気がつきます。

それには、土日が休息日となると用事の済ませ方が知らずの内に変わってくるのです。とりわけ私はクリスチャンでも無ければ会社員でも無いフリーランサーなので、週末に仕事をせずに休むことは滅多にありません。

言ってみれば、一般人が休息する時に働いて、逆に一般人が働く時に休む(休めた事はないのですが、、、)という逆行の生活スタイルです。そこでなおさら雑用の勘定が狂ってくることになります。

例えば、ネットで商品を注文した場合の配達。5日以内に配達、とお知らせがあるとしましょう。年中無休の24時間アクティブなフリーランサーの私の脳みそには、土日も営業の勘定にバッチリ入ってしまうので、5日以内に配達されないと不愉快になるのですが、「おっとっと週末は勘定外」と毎度思い出させられる訳です。

土日が休息となると、週日に済ませなくてはならない雑用が増える、ということです。そんなこんなで、休日が多いイタリアに長年住んで、相変わらず歯車が合わせられず急かされた生活を送っている訳です。

空回りさせられる沢山の事柄のうちの一つに、先日、靴屋さんに修理をしてもらう靴を持って行きました。日本の皆さんでしたらミスターミニットを思い浮かべたところでしょうか。通勤の途中の道沿いなど地下鉄駅のそばなどミスターミニットは便利な場所にお店を構えていて、それこそその時に履いている靴のかかとなどを交換したい時なんてスリッパと腰掛けまで用意してくれて30分後には「ハイ、出来上がり!」と新品同様に生まれ変わった靴を履いて出勤できる、という絶句のスピードです。

ところが、イタリアでは靴のかかとの交換でさえ1週間かかる、という調子の狂わされる速さなのです。イタリアに住みなれた頃に、踵の交換をしてもらう靴を持って靴屋さんに向かいながら「イタリアだから30分では無理だろうから明日くらいかな」なんて思って靴を出したら最後、「はい、来週」と屈託のない表情で言われて、私の靴はポイと棚へ。


たまに仕上がっていないこともあるので呆れるどころか、この呑気さが羨ましくなるのです。
そののんびり靴屋さんですが、靴の修理を出したお客さんには、靴を取りに来ない人がかなりいて困惑しているとか。靴屋さん曰く、「せっかく直したのに、それに加えて引き取られない靴が溜まる一方で困ってるよ」と。で、そういう靴は売りに出すのだそうです。


姨捨山の話を思い出させられるような話ではありませんか、、、靴捨人が絶えないイタリア、、、ところで、ミスターミニットがイタリアに進出したらあのスピードを評価しないイタリア人がいるのかどうか興味津々?

特派員

  • 三上 由里子
  • 年齢戌(いぬ)
  • 性別女性
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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