• 2018.09.18
  • モンツァって?
自己紹介の際に「イタリアに住んでいる」と言うと、一般的に日本人はイタリアに好感を持っているので目を輝かせてくれて「わー、素敵!イタリアのどこですか?」と尋ねてくれます。私の住んでいる町は、幸いにして誰しもが知っているミラノ。だから答えも簡単で楽です。相手が日本人に限らず、ミラノと言えば大抵の外国人はイタリアにおけるミラノの位置は勿論、ミラノファッション、ミラノフェア、2015年のミラノ万博などを把握していて会話のキャッチボールはスムーズに運ばれて行きます。

ところがミラノに住んでいない私の友人の場合は、違った会話を辿ります。例えば、「私はモンツァ出身。モンツァって、どこって?ヒントは、F1よ!」とチャーミングに自己紹介をする私の友人は、ミラノから北東約15キロの所にあるモンツァという町に住んでいます。


モンツァはF1サーキットのある町で、そばに住んでいなくてもカーレースの独特の音が風に乗って聞こえてくるのだとか。私は、カーレースを会場で見たことがまだ無いのですが、巨匠音楽家のカラヤンが、その騒音を「まるで交響曲を聴くかのようだ」とカーレースに熱狂していたそうなので、私もそんな体験をしてみたいなぁ、と思っています。

モンツァは、ミラノのミニチュア版。ですが高層ビルが無いので、圧迫感の無い落ち着く町です。中心地は車が入れない歩行者天国になっているので街中の散歩もゆっくり楽しめます。



バスに乗らずに歩きながら6箇所くらいのスポットを回れるルートが伺える看板が見受けられます。なんとはなしにルートを辿ることにしたら、宝物探しゲームに参加しているみたいな気分になりました。



ミラノのミニチュア版と言っても侮れない事柄がいくつもあって、その一つが長い大通りの先に見える宮殿とその公園。この宮殿にはいくつか面白い話があって、ラデッキー行進曲で有名なラデッキー将軍が一時期滞在したとか、ウンベルト1世とマルゲリータ女王が住んだ時代には、スポーツイベントに出席したウンベルト1世は暗殺されてしまい宮殿に運び込まれ、彼が亡くなったベッドが今でも見られるなどなど。



広大な公園は万人に開放されていて、日常的にジョギングやサイクリングをする地元住民が利用し、週末にはミラノや近郊から家族連れで公園に来て、4人乗りの重い自転車を持て余して苦笑しながら漕ぐ家族などであふれていて、長閑でかつ楽しい公園として250年間人々に愛され続けた場所です。

モンツァにもドゥオモ(大聖堂)があります。ミラノのドゥオモのような規模ではありませんが、このドゥオモも外観も内部も美しいです。このドゥオモの建築者はドゥオモを建てた後に隠しきれないミスを見つけてそれを恥じんで自殺してしまった、と聞いた記憶があるのですが、この話を裏付ける実記を見つけられず、確か真正面からドゥオモを観察するとミスがわかるはずだったので、より思い出せるかもしれないと思ってドゥオモまで行った所、今は外部修復中なので見ることができず期待を裏切られました。



ミニチュア版だからと言って過小評価できない要素は続きます。モンツァの夜は、どうやらミラノよりも賑やかです。聞くところによると、街中をゆっくりとお散歩できるのは夕方までで、夜になるとレストランはどこもいっぱい、街中も人にぶつからずに歩くのが難しいとか。

頷けます、なぜってモンツァには入りたくなるような素敵なレストランやお店がいっぱい。

小さな町にミステリーやドラマがいっぱい詰まっていて訪問したくなるでしょう?

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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