• 2018.10.11
  • コーヒー
イタリアの日常生活で欠かせないのが、コーヒー。どんなにおおらかなイタリア人でも、モカポットにコーヒー粉を詰めるときには異常なほどのこだわりを見せてきたりします。粉をスプーンで押しながら入れてはダメとか、程よく盛り上げるとか、弱火でじっくり煮出せとか、、、


最近は、Nespressoのカプセルコーヒーがイタリアの家庭に浸透したので、モカポットのコーヒー粉の入れ方でイタリア人が私を閉口させる機会がなくなりました。ホッとする….


イタリアに来て間もない頃、同僚にくっついて入ったバール(カフェテリア)で、いつものように「エスプレッソをお願いします」と注文がなされる中に、聞いたことが無い単語で注文をした同僚が一人いました。

「私には、マロッキーノ」

彼女の前に出されたこのマロッキーノが、とてもお洒落な飲み物に見えて注文をした彼女まで洒落て見えたものですから、この次は私もマロッキーノを注文してみるぞ、と思いながら彼女のコーヒーを見つめたのでした。


Marocchinoは、モロッコ風という意味なのですが、このコーヒーがモロッコから伝わったのでモロッコ風というわけでは無いようです。 見た目はカプチーノのミニサイズ。大抵は、ガラス製デミタスカップで出されるこのコーヒーは、チョコレートシロップ、ココアパウダー、エスプレッソコーヒー、フォームミルクの層が綺麗に見える飲み物です。日本人には強すぎるエスプレッソの苦味もチョコレートシロップとフォームミルクでマイルドな味わいに仕上がるので、見た目と言い美味しさと言い、私はすっかりマロッキーノを気に入り一時期ハマりました。

マロッキーノに飽きた後は、エスプレッソに戻ったかというと、いーえいえ。イタリアのバールには、隠されたコーヒーメニューがあることがわかったのでした。日本にもコーヒーブームが到来して、最近はカフェテリアのメニューでは様々なタイプのコーヒーがあるので読んでいる内に私は時々戸惑ってしまうのですが、イタリアでは、しばしばお店に掛かっているコーヒーメニューはシンプルで主流の飲み物だけだったりするのです。


ですが、よくよく観察するとバールのbaristaは、お客の細かい注文に応えているのです。そのバリエーションの多さと言ったら、記憶力が無いとbaristaは務まらないだろうなぁ、と感心してしまいます。

イタリア人が仲間で連れだってバールに行くと、カウンターで注文するコーヒーの種類が10種類以上になることだって有り得るのです。しばしばbaristaはたった一人で注文と給仕とレジまですることも。

「僕はエスプレッソ」
「私には、マッキアート(エスプレッソにミルクを足すもの)」
「ボクにも、マッキアート、でもミルクは温かいもので宜しく」
「僕には、Ristretto(エスプレッソよりも量が少ない、コーヒーの抽出の最初の部分だけ)」
「あたしは、カプチーノ」
「あ、私も、カプチーノ!でも、シナモンパウダーをかけてちょーだい」
「わたしも、カプチーノ。でも、カカオパウダーがいい」
「俺は、Latte macchiato(グラス一杯のホットミルクにエスプレッソコーヒーを加えた飲み物)」
「僕と彼女には、Orzo(大麦コーヒー)。でも、僕には小さいカップで、彼女には大きなカップ」
「私には、crema caffè(クリーム状の冷たいミルクコーヒー)にヘーゼルナッツクリームを足して。 彼女には caffè shakerato(シェーカーでシェイクした冷たいコーヒー)」


バリエーションは続く…………………


特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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