• 2019.08.06
  • 猛暑と避暑
2003年に記録的な猛暑の夏がヨーロッパを襲いました。が、今年の夏は2003年の夏を上回るような暑さと言われるくらい熱波の毎日が続いています。日本の暑い夏に育った私でさえ、最近はボンヤリ気味で思考も体も止まりがち。


ミラノの一般家庭にクーラーが普及しだしたのは実は割と最近のことです。分厚い石造りが基本の建物は、外気温度の影響を緩和させる働きがあって、木製の伝統的日本家屋とは屋内の体感温度が随分と違うものでした。そのせいなのでしょう、クーラー無しでも過ごせていたのです。近年、建築様式が変わって最近建設されるミラノのマンションは、鉄筋コンクリートが多いようです。加えて、ヒートアイランド現象と気温上昇の影響で、都会に暮らすミラネーゼにとって、夏はより酷な季節になって来ました。


昔ながらの石造りのマンションにクーラーを新たに設置するのは、そう簡単ではないらしくて、まずは分厚い壁に穴を開ける工事でかなりの費用がかかる様子。そのせいなのか、クーラーをつけていない家庭が未だに多くて、ゲッソリとやつれた表情とため息を漏らしながら出勤して来た同僚を見ると、クーラー無しの熱帯夜に悩まされ不眠が続いていることが伺えるほどです。

夏になるとミラネーゼ達は、海や山に避暑するのが典型的な過ごし方です。昔のミラノの貴族達が避暑地としてコモ湖周辺に来ていたことが伺えるのが、今もなお残る湖畔沿いに並ぶ数々の豪華な邸宅。これらの邸宅の一つにとは言いませんが、コモ湖畔に1年住んでみたいなぁ、と漠然とした願望があります。


湖畔沿いの朝から晩までの色合いの移り変わりや、晴天や雲空や雨天時の景色や、四季が織りなす変化などを堪能したい、と呟いたところ同席していた同僚に「勧めないよ。コモ湖の住民は、見知らぬ外来者には冷たいんだ。その癖、君のことを始終観察して、君のことはなんでも知り尽くすんだ。住むには居心地悪いところさ。スーパーだって遠くて何十キロもある距離でさ、だから日常生活は不便。それに夏場に湖畔は賑わっているけれど冬には様変わりするんだよ。湿気と薄暗さと人っ子一人見かけない。もともと建っている湖畔付近の家々は、天井も高いし冬場の暖房費がすごくかかるんだ。僕も、ミラノの都会の喧騒を逃れたくて、それとミラノの家賃の高さに閉口していて、コモ湖沿いの親の別荘に一時期住んでみたことがあるけれど、最悪。 」とピシャリと言われ、私の願望はあっという間に打ち砕かれてしまいました。

一方、コモ湖育ちのコモ湖在住の知り合いはコモ湖をこよなく愛していて「コモ湖は最高!僕なんて夏場はほぼ毎日、子供を連れてボートで湖に繰り出すんだ。車の渋滞に遭わずに他の街に行き来出来るし、移動の途中で湖に飛び込んで体を動かしたり体を冷やしたりまたは遊んだり出来るし、それから水上ってリラックスするしね、湖畔の反対側の友達も迎えに行ってボートに乗せてあげることができるから便利だし楽しいよ。クーラーは念のために家に設置したけれど、つけることは滅多に無い。それから、最近は子供達のTVゲーム中毒や携帯電話中毒とかが問題になっているけど、湖畔の僕たちの子供達は、湖に繰り出してアクティブに動いていて電子機器の存在を忘れるから、児童に電子機器が 影響を及ぼしている問題は少ないんだ。」と自慢げに語ってくれました。


なるほど。

今の所、コモ湖住まいには欠点と長所が引き分け。となると、一度住んでみたいなぁ、と憧れと興味が再び沸き起こってくるものです。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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