• 2019.09.10
  • 塩事情
何年も前になりますが、ミラノに移り住んだシチリア人の同僚に関して印象的だったエピソードがあります。この同僚は、休暇を利用してシチリアに住んでいる両親に会いに行き、お料理上手なマンマが作ってくれた郷土料理をたらふく食べて、少々お腹周りがぷっくりして、顔も少々丸くなってミラノに戻ってくるものでした。

ところで、マンマとは、日本で言うご飯のマンマでは無くて、イタリア人のお母さんのことですよ。今でこそ、特にイタリア北部では食事の習慣も変わってきているので、マンマという呼び名のイメージのお母さんは少ないのではありますが、朝から夜までお料理のことを考えて手間暇をかけた美味しい手料理を家族に作ってくれる恰幅の良いイタリア人のお母さんは、なぜしか「お母さん」とは訳すには抵抗があって「マンマ」としか呼びようがないのをお察しいただけるでしょうか。

さて、ミラノに戻ってきたこの同僚がスーツケースを開けると、中はシチリア特産食品でいっぱいでした。その中で私の注意を引いたのは、何袋もの食塩。

シチリアには塩の生産地があります。あのお塩は、きっとその当時の北部では売っていないような美味しい塩だったに違いありません。

北部のスーパーでは、シチリア産の塩が主流として売られています。塩コーナーには、ヒマラヤ産やハワイ産など様々な国の塩も並んでいて、今や塩への関心を高める良い機会のように思えます。

イタリアでは、パスタを茹でる時は粒の粗い塩を使うのが一般的。その他のお料理には細かい塩。つまり粒の粗いのと細かい塩を常備しているのがイタリアの一般的で基本的な塩事情。更にこだわる人は、お肉料理などに振りかけるフレーク状の塩も備えていたりします。


色々な地域の塩を手に入れることが可能な物品が流通している今の世の中、世界中の食塩、岩塩、海塩、湖塩などを食べ比べて自分で発見発掘した通な食べ方を見つけてみたいものです。と言うのは、イタリアでお料理をしている時と同じ感覚で日本でお料理をすると、毎回思ったように仕上がらなかったことから、水や素材の違いの他に、更には塩味の影響に気がつかされたのです。

まず初歩的なスタートを切って、スーパーで売られているような一般的な塩から調査(!)を始めることにしました。日本のお塩とイタリアのお塩を食べ比べたところ、イタリアのお塩は、しょっぱさの後に味の広がりを感じられました。ついでにフランスの有名な塩田の一つであるカマルグ地方の天然塩も注意して調べると、まずは粒の形の違い。これが、きっとフレーク状と呼ばれている塩に違いありません。 これは、イタリアの粒の粗い塩と比べると、マイルドな塩味だけれど、しょっぱさだけでは終わらない味の奥深さが感じられます。グリルの肉料理にフレーク状の塩が合うと言われているのが納得。

そこで塩の旅というのも面白そうだ、と思い塩田を訪れることにしました。昔、シチリアのシラクーザの町を通ったときに、バスの窓から見えた塩田の光景は、写真には収め損ねたものの印象的でした。


フランス カマルグ地方の塩田は、プランクトンと藻の色でピンク色の塩田が広がっています。そこが、太陽の日差しと適度な風で干あがってゆき、自然に白色の塩になるというのも驚きです。


私たちの食生活に深い関わりがある塩。毎日、塩を摂取しているにもかかわらず、塩について大した関心払わずに日々の食生活を送ってはいませんか。

昔は、お給料としてお金では無くて塩で払われていた価値のある物だったというのに!
つまり、その内時代が変わって、お金の存在に代るものが現れるであろうことも気になるところです。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地に、ソロコンサートアンサンブルの編成で演奏活動の傍ら、演劇、画像、舞踊やライブ演奏を組み合わせたマルチスタイルの舞台プロデュース。

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