• 2023.02.03
  • お風呂
日本人はお風呂好きで、家庭でお風呂に入る頻度がとても高い国民だと思います。イタリア人はどうかと言うと、シャワー派が圧倒的に多いようです。その証に、シャワールームはあるけれどバスタブは無い家が結構多いみたいです。その反面、家の大きさの割りに、トイレ付きのシャワールームとトイレ付きのバスルームの両方を備えているマンションが多いので、それはそれで奇妙な感じがしました。私だったら、あまり大きくない家であればスペースのやりくりをするために、どちらか一つは収納スペースにするでしょう。


それはさておき、お風呂好きの日本人は、公共的な銭湯や温泉をも日常的に楽しむ国民だと思いますが、イタリア人はそうではありません。古代ローマ人の入浴習慣についてはコミック漫画のテルマエロマエでご存知だとは思いますが、例えば、ローマのカラカラ浴場の遺跡は世界的に有名な観光スポットとなっていて、訪れた観光客が、その大浴場の周りに図書室、遊戯室などの色々な娯楽施設が集まった複合施設だったと言う奥深い歴史に感嘆するにもかかわらず、現代のイタリア人は、日本人の入浴好きには遥かに劣っているように思えます。


その証拠の一つに、現代でも素敵な温泉施設などがイタリア各地に存在しますが、基本が水着着用なことから、お風呂の楽しみ方が日本人のそれとは違うように思えます。つまり男女混浴。日本人は、家庭でお風呂に浸かるのと全く同じように公共の銭湯や温泉で、入浴前に身体を洗ってから熱いお湯に浸かって、周りに見知らぬ人が居て入浴していても、それは全く問題なく、心身ともに洗われて癒やされる状態を堪能しますが、イタリアの温泉施設でのイタリア人たちは、男女混浴で水着着用をして、頭から爪先まで石鹸で洗うことなく、ぬるめのお湯に浸り、色々なタイプのサウナを試したり、ジャグジーバスなどに浸かるといったように、水を使って健康を促進する機能がある施設で、つまりスパでリラックスすると言う感じです。もしかすると、温泉に入るよりも、温泉水を飲んで治療効果を高める習慣の方が多い気配がします。


そんなこんなで、日本の銭湯や温泉に抵抗があって公共の大浴場などでの入浴を拒むイタリア人観光客は、結構沢山いるのではないでしょうか。まず最初に拒否反応を起こすのが、知り合いであろうがそれこそ知り合いでも無い人達全員が素っ裸になって共に入浴することらしい。人前でそんな無防備な状態にはなれない、ということでしょうか。それは、もしかするとヨーロッパ各国が大陸続きで侵攻や征服の繰り返しをしてきた歴史の名残で、自己防衛本能の一つかもしれません。


今日に至っては、公共の大浴場で入浴なんて絶対ヤダヤダと食わず嫌いで嫌がっていたイタリア人も、試してみたら日本の銭湯や温泉の楽しみ方の良さがわかって、最後には病みつきになっている人もいて、それはそれで喜ばしいし、またその変わりようが微笑ましい。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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