アボリジニは、時には我々に牙をむいてくる自然環境と共存する知恵を持つ達人で、ブッシュタッカー(奥地で採取した自然の食べ物)を食べて生き延びてきました。
オーストラリアといえば誰しも、ビーチや紺碧の海、サーフィン、緑豊かな風景などを連想するでしょう。しかしその美しさは、未経験の探検家だろうと手加減しない、自然の恐ろしさと表裏一体なのです。
アウトバックに行ったとき、良い探検家になるための第1のレッスンはブッシュタッカー食の知識を身に着けることだと教わりました。生きるか死ぬかの状況じゃなくても、未知の味にトライして味覚を広げる機会にはなります。ここで湧いてくるのは、ブッシュタッカー食って何?という疑問ですね。
「ブッシュタッカー」とはよく知られたオージー、つまりオーストラリア語で、言葉の意味は「自然から採取した食料」。この大陸上に生息するすべての動植物で、未開墾地(オーストラリア奥地)に生きる人類が食べられるものを指しています。
健康食としてのブッシュタッカーの薬効は世界的に有名で、マカデミアナッツやユーカリの葉なんかはその代表です。色彩の豊かさと未知の味わいを秘めたこれらの野生の食料は、オーストラリアの大自然の多様性を見事に反映しています。
オーストラリアのアボリジニ文化で主食とされているブッシュタッカー食は、イギリスの植民地になる前、数千年もの間この地を占有していた先住民の文化から繋がる歴史を持っています。
自然という環境を知ることは、彼らの文化の柱です。自然の力を最大限に引き出す方法を、彼らはよく知っています。アボリジニ文化では、どんなものでも収穫して利用することができます。捨てるもの、無駄にするものなどありません。ただし、彼らは自然の危ういバランスを維持しつつ必要以上のものを取らないことが重要であると信じていることも知っておいてください。アボリジニはそれぞれの土地で魚を釣ったり狩りをしたり、農作物や家畜を育てたりしながら、食生活のほとんどをブッシュタッカー食に頼って暮らしています。
彼らはオーストラリアの自然の恵みの全てを味わい、それらの食料をもたらすそれぞれの季節を賛美しています。
オーストラリアに上陸した最初の白人の中にも、食べものについてアボリジニの知恵を学んだ入植者がいました。彼らは他の入植者よりも長く生き延びられたでしょうね。とは言っても、昆虫や根っこなどを使ったある種の料理に慣れるのは、西洋人には並大抵のことではありません。しかし、口に合わないそれらの食料の健康食としての価値は高く、現代医療の分野でも多用されているのです。
先祖伝来の知恵とレシピをもとにした、オリジナルな名物料理をつくるアボリジニ出身の有名シェフもいるほどです。彼らの料理は、その着想も食材も、野生の自然なしにはあり得ないのです。
ブッシュタッカーの食材で、とくに一般的なものは何でしょうか。
カンガルーやエミュー、幼虫、カメ(カメの首はアボリジニにとってはご馳走。通常は保護の対象であるワニを食べられるのはアボリジニだけです)、ワニ、ヘビやイグアナなどの爬虫類といった珍しい肉は、肉に目がない人やバーベキュー好きならトライできるかも知れません。
ブッシュタッカーの中には、未来の食材とも言われる多くの昆虫も含まれます。
果物や野菜としては、ワトルシード(焼いて食べたり、製粉したり)やクワンダン(別名「ワイルドピーチ」)、マカデミアナッツ(生のままやグリルしたものを食べるほかオイルの材料にもなる)、ユーカリ(天然由来の殺菌効果で知られる)、ブッシュバナナ、ブッシュトマトなどが挙げられます。
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