信仰を持つ人のうち半数以上がクリスチャンで、その大部分はカトリック教徒ですが、英国国教会とプロテスタントの信者がコンスタントに増加しつつあるため、最近ではカトリック教徒の数は少しずつ減ってきています。
また、宗教とは別のものとして「スピリチュアル」という概念も広まりつつあります。これは、ここ10年の間にオーストラリア国内外で一般的な言葉や文献に登場するようになりました。
オーストラリアでみられるその他の宗教は、人口構成を反映しています。オーストラリアは古くから移民の国であり、世界各国から人々を迎え入れてきました。イタリア人、ギリシア人、レバノン人、ベトナム人や中国人など、世界のあらゆる国の人々がそれぞれの宗教や信仰を持ち込んでこの国に定住したのです。
そのため、オーストラリアにはヒンドゥー教やイスラム教、仏教、ユダヤ教などの祈りの場所が至るところにあり、世界中の宗教が集まった万華鏡のような場所になっています。
シドニーで車を運転すると、アル・ザーラ・モスクの前を何度も通ります。これはオーストラリアで最初かつ最大のシーア派のモスクで、とても素晴らしい外観をしているのですが、残念ながらイスラム教徒以外は入ることができません。
シドニーには、ユダヤ教の会堂であるシナゴーグもたくさんあります。調べたところ30か所ほどあるようですが、まだ行ったことはありません。
シドニーから南へ1時間半ほどの、バークレー郊外にある南天寺には訪れたことがあります。
ここは南半球最大の仏教寺院で、このお寺の名前には「南の楽園」という意味があります。非常に素晴らしい場所で、地元の観光名所になっているほど。ここに来たらまず、お寺の建物に感銘を受けることでしょう。
寺院の中には2つの仏堂があり、建物内部には中国文化と仏教を歴史的・文化的・そして芸術的側面から紹介する博物館もあります。さらに、さまざまな会議室や瞑想室、レストラン(メニューは精進料理のみ)、宿坊など、参拝客や信者のための施設も用意されています。ほかにも、祈祷室や書院を備えた八重の塔も見逃せません。
アボリジニの人々と伝統文化に関して言うと、彼らは地球との密なつながりを保ちながら、あるいは共生しながら生き続けています。
アボリジニの人々は「ドリームタイム」という概念を宗教的に崇めています。これは、人間と宇宙、時間をさまざまな信念からなるひとつの体系にまとめたものを指します。そして、アボリジニの慣習の中核をなすのが「トーテミズム」です。人間がトーテミズムによって動物や植物と結び付いているとするならば、その種との関係において、人間の務めや禁止事項を尊重しなければならないという考え方です。だからこそ、アボリジニの人々はたとえ小さな石ころであっても、生きているすべての種を含む広い意味での自然に対して絶大な敬意を払っているのです。
アボリジニの神話では、世界はワラムングンジが海から現れて人間を作った際に生まれたとされています。その後、他の精霊たちもやって来て、ワニのギンガとカンガルーのガンダジッジ、ヘビのアルムジのおかげで山ができ、それまで平らだった地球の姿が変わりました。その作業が終わると彼らは人間の夢に現れ、ドリームガイドとなって聖地から聖地へと案内して回りました。
彼らの信仰は複雑で、理解するにはかなり難解ですが、アボリジニの人々によるドリームタイムに関する講義に参加するのは、とても素敵な体験です。
シドニーにあるニューサウスウェールズ州立図書館では、アートショーや講演会のみならず、このテーマの展示を見かけることも珍しくありません。
また、子どもたちが参加して学べるワークショップも開催されていて、図工や読み聞かせなどのイベントを通してこの先住民族の文化を学ぶことができます。
オーストラリアは総じてとてもオープンなお国柄です。大部分のオーストラリア人は異なる文化に対して敬意を払って受け入れ、その文化についてもっと理解しようとする人たちなのです。