移民による入国者数がピークに達したことがこの国における住宅危機の唯一の要因だと主張する人もいるようですが、専門家や新聞によれば、本当の原因はもっと深いところにありそうです。
大都市の中心地であれ地方都市であれ、オーストラリアで購入可能な住居の比率は歴史的に見ても低い水準に留まっていて、シドニーでもメルボルンでもほんの数年前の半分にまで減少しています。
統計によると、賃料が高騰しているので、家賃の支払いを続けるぐらいなら住居を購入した方が経済的には利点が大きいのだとか。
とりわけ、この1年は指数関数的に家賃が高騰しているのです。
新聞には「記録的な移民の数も住む場所なし。賃貸住宅難のオーストラリアへ、ようこそ!」「記録的な移民、住宅市場を破壊」といった見出しが並び続けています。
これらの見出し文はすべて同じ方向を示しており、「住宅難」と「移民」の因果関係を示唆するものになっています。
現在、国境が開かれて多くの移民が入国しており、パンデミック以前のレベルまで入国者数が増加しているのは事実です。が、それを「侵略」と呼ぶことはできません。
これは私の考えですが、他の地域と同じくシドニーで起きているここ数か月の家賃高騰は、住宅需要の高まりと全国的な物件の空室率が1%という過去最低水準にあることとが相まって生じたものではないでしょうか。
ガーディアン・オーストラリア紙の調査によれば、インタビューされたオーストラリア人の半数以上が、国内の住宅危機と戦うためには、すべての人に充分な住居が供給されるまで移民の流入に上限を設定すべきだと答えました。
しかし、近年の移民数増加は実のところ、問題のほんの一部に過ぎません。
新しい入国者や移民のほぼ全員が賃貸物件を利用するのは確かですが、これはあくまでもここ最近に起きた現象です。パンデミックの最中、国境が閉鎖されていたにも関わらず、賃貸価格が大幅に上がったことを忘れてはいけません。
新しく住宅が建設されないことが問題だと言う人もいます。
多くの人が人口計画政策や住宅不足、さらにはキャピタルゲインに対する減税措置、いわゆる「ネガティブギアリング」や利子控除を含めた税制の見直しを行うべきだと指摘しています。
議会は昨年9月、公共住宅ならびに数千戸の新築住宅建設に充てられる資金提供と投資の計画を承認したようですが、実際の工事開始時期は未だ不明です。
不動産アナリストは、オーストラリア準備銀行が年内利上げの可能性を示唆していることから、2024年もオーストラリアの住宅価格は着実に上昇するだろうとの予想を発表し続けています。
初めて住宅を購入する多くの人にとって、住宅の平均価格は高すぎます。そして、この問題を助長しているのが失業率の低さ、賃金上昇率の高さ、そして移民の増加で、これらの要因によって価格は高騰し続けるでしょう。
2008年の金融危機以降、住宅価格はほぼ2倍になったという記事を読んだことがあります。
今年後半に減税と金利の引き下げがあれば借入がしやすくなるので、基本的に住宅賃貸価格は上昇を続けるでしょう。
良いニュースもあるにはあります。最近成立した法律のおかげで、高所得者はより多く課税され、生活費の高騰にあえぐ低所得者の税金は低く抑えられます。
パンデミック時の記録的な低金利と住宅供給不足は、ただでさえ高くつく住宅価格の上昇に拍車をかけ、初めて一戸建ての購入を考えている人たちを賃貸市場へと向かわせたのです 。