オーストラリアで最も知られた風変わりで魅惑的な動物と言えば、鳥類です。
驚くほど美しい鳥たちは私がこの国での暮らしを愛する大きな理由の一つであり、休暇でヨーロッパに足を踏み入れた途端にオーストラリアを恋しく思う由縁でもあります。
太陽が沈む頃に、お利口な鳥たちは時間どおりに巣に帰って行きます。30分ほど空中で一斉に金切り声で鳴き、ペアあるいは小さなグループに分かれて旋回しながら家路につきます。そして一緒に「お休み」を告げた後は、瞬く間に静かになって夜明けを迎えるのです。
朝になると、私に言わせれば朝のあいさつには時代遅れとも思えるほどエネルギッシュな声で鳴いて、窓越しに目覚めさせられることもあります。
オーストラリアにおける鳥たちの存在は非常に大きく、翼を持たない二足歩行動物である私たち人間が創設した「オーストラリアン・バード・オブ・ザ・イヤー(Australian Bird of the Year)」という鳥のコンテストがあるほど。投票は何週間にもわたって真剣に行われ、メディアにも取り上げられます。
どの鳥が優勝してきたのかはよく知らないのですが、たまに「やあ!きみが優勝したぞ、よくやったな!」と鳥に話しかけている人や、口笛を吹いて鳥たちの気を引こうとしている人を見かけます。鳥たちもよく人に慣れていて、例えば私も何回か会ったのち友だちになったオカメインコが近所に1羽いるのですが、私が近寄るとすぐに飛んできてアダムス・ファミリーのテーマ曲を歌ってくれるようになりました。
オーストラリアの鳥に関する私の知識は、数は少ないけれど有名な種から始まり、時間が経つにつれて増えていきました。
非常に凶暴なカササギフエガラス(Australian magpie)は、「眼窩をえぐる鳥」とも呼ばれ、その名を聞いただけで地元の人がパニックに陥るほど恐れられています。
この黒と白のカササギフエガラスはほとんどの季節はおとなしく、特徴ある旋律に乗せた魅惑的なさえずりで皆を楽しませてくれるのですが、春になって巣づくりを始める10月が訪れると、1カ月半の間は悪夢のような存在になることもあります。
営巣地域によっては、通行人に注意を促す標識まであるほどです。
オーストラリアでも大都市にいるから自分は安心だ、と思っているそこのあなた、それは大きな間違いですよ!
都会であっても、数週間の間は通行を避けたい公園や通りがあるのです。オスのカササギフエガラスは、あなたが落ち着いて買い物に出かけている姿を見ると、卵や巣の中でのびのびと育ちつつあるヒナを脅しに来たと思い込んで、容赦なく攻撃を仕掛けてくるのです。
彼らはまず、警告かつ脅迫のサインとして周囲を飛び回った後に、クチバシで攻撃するために急降下してきます。
ときどき顔や首、腕などに傷を負って病院を訪れる人を見かけます。中には、この鳥に襲われて子どもが目を失ったケースさえあります。
カササギフエガラスは急いでいる人や自転車に乗っている人を襲うことが多く、特に目を狙います。言うまでもありませんが、もし襲われた場合は、たとえ防御のためであっても攻撃してはいけません。彼らは法的に保護されているからです。襲われた際に私たちが出来ることは何ひとつありません。カササギフエガラスは、ほかの多くの鳥類と同等かそれ以上に優れた記憶力を持っていて、人の顔を認識するスキルにも長けています。前回とまったく異なる服装をしていても関係ありません。あなたが再び彼らの縄張りに現れれば、カササギフエガラスはあなたに気づくのです。もし初めて攻撃されたなら、次もまた襲ってくるのです。何度も、何度でも襲ってくるので、通るルートを変える方がよさそうです。
一方、キバタン(sulphur-crested cockatoo)は、明るくて繊細な性格の非常に愛らしいオウムです。
オウムには素晴らしい品種が数多くありますが、頭の後方にレモンイエローのトサカを持つキバタンは特に美しい鳥です。何かに興味を示したときや怒ったとき、極度に興奮したときにはトサカが前方に立ち上がります。
ほかにも、たいていの公園や遊び場にたむろしている面白い鳥、オーストラリアクロトキ(Australian white ibis)は、ピクニックのお弁当など、人間の食べものを常時横取りしようとしています。