そんな風に言うのは、生き物が苦手なタイプの人たちです。
ヘビに昆虫、羽を持つあらゆる種類の虫など、オーストラリアには生き物がたくさん生息していますからね。
なぜそれほど多くの人が虫を怖がったり、嫌ったりするのかは私にはわかりませんが、多分虫が這う様子や外見、あるいは体の色などが気分を害するのでしょう。
ですが、昆虫には良い側面もあるのです。
虫たちに付きまとう「悪評」は、おそらくオーストラリアに住むある種の生物に対して悪い印象を与えるような言い伝えや都市伝説によるものでしょう。試しにオーストラリア人に聞いてみてください。きっと「オーストラリアは安全な国で、大半の野生動物は人間が彼らを怖がる以上に人間を怖がっているんですよ」という答えが返ってくるはずです。
クモを含むほとんどの虫は、全くの無害です。
特にクモは、害虫を駆除してくれる役に立つ昆虫です。多くは夜行性で、餌となる昆虫を捕食するために通常は屋外で生息しています。オーストラリアのクモで非常に危険なのは、シドニージョウゴグモとセアカゴケグモの二種類のみで、この40年間はクモに噛まれて死んだ人もいません。この二種類のクモには抗毒素血清があり、オーストラリアの病院や診療所ならどこでも入手可能です。
オーストラリアの昆虫と言えば、まだニッチではありますが、食用昆虫への関心が高まっています。
牛や豚、鶏など以前から飼育されている家畜は、現在世界最大のタンパク源になっていますが、これらの動物性タンパク質の生産量が増え続けると、環境保全に対するコストも高まりますし、天然資源をどれだけ使えるかということも考慮しなければなりません。気候変動がもたらす多大な影響に耐えうる、より強靭な食糧システムの構築や、多様でバランスの取れた食事への希求の高まりに対応するためには、食糧供給チェーンを多様化することが必要です。
オーストラリアは、農業における技術革新力、生物学的多様性に関する知識、農工業分野の研究開発力や経験を基に、食用昆虫分野において価値を創出しようと試みています。
投資拡大や継続的な協力、研究開発により、オーストラリアは栄養価が高くて持続可能、かつ倫理的な食用昆虫製品の生産において世界をリードすることができるのです。
食用昆虫は、安全でより持続可能な食糧システムの実現という世界的な課題を克服する大きな助けになるでしょう。
現在の西洋社会では昆虫は主食ではありませんが、プロテインバーや粉末、ビスケットやチョコレートといった一般的な食品の中には昆虫を含んだものもあります。食用昆虫とその粉末は、多くの食品に利用できるのです。
昆虫食、つまり虫を食べる行為はオーストラリアでは何千年も前から行われてきた習慣で、アボリジナルの人々の伝統食として多くの昆虫種が記録に残されています。この独自の文化的知識を活用することで「オーストラリア製の昆虫食品を世界のマーケットに向けて製造する」という革新的なビジネスの可能性を高めることができるでしょう。
西洋文化圏の大半では、昆虫と言えば不潔で害があり、危険で、ほかに何もない時にだけ仕方なく食べるもの、あるいは極貧の人たちが食べるものという固定概念が定着しており、昆虫に対する嫌悪感があります。
嫌悪、あるいは気持ち悪いと感じる要因は明らかなので、昆虫食に関する認識や物語をポジティブに転換することが、業界にとって最大のチャンスとなります。
かつて食文化において昆虫食が肯定的に受け入れられていたという、これまであまり伝えられてこなかった事実は再評価されるべきです。ですが、昆虫は非常に興味深い生き物であるにも関わらず、残念なことにオーストラリアの若者世代からは時代遅れだと見なされています。
私たちはアボリジナルの伝統に立ち返り、彼らの昆虫料理のレシピを学ぶこともできるでしょう。
持続可能性が鍵となるこの時代、昆虫食はより持続可能性の高いタンパク源なのです。