フィンドレー大学のキャンパス内にあるこのミュージアムでは、世界中の絵本の原画コレクションが展示されており、その作品所蔵数は11,000点以上にものぼります。(上のお写真:展示されている作品の下にある黒いファイルは、その作品の絵本作家・イラストレーターの紹介ファイルで、その方自身をより詳しく知ることもできます。)世界の絵本の原画の中でも、子ども向け絵本のイラストレーターのオリジナル作品を中心に展示されており、有名なイラストレーターやコールデコット賞(=Caldecott Medal:アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に授与される賞)受賞者の2,000点余りの作品が鑑賞できます。貴重な原画だけではなく、使用された画材や、どのようにしてアイデアが生まれたか、絵本がどのようにして出来上がるかのプロセスを知ることもでき、とても興味深いです。
このミュージアムは、1982年にフィンドレー大学の学部100周年記念の一部として始まり、現在は様々な地域交流活動やイベントも行われています。今回、私もこのミュージアムの大人気イベントである「Funday Sunday」に参加してきました。このイベントは、10月~4月毎月1回日曜日に開催されており、毎月のテーマに沿って様々なコーナーがあり、それぞれで子どもたちが家族と体験活動を行うことができます。また、絵本のアーティストがゲストとして訪れて、プレゼンテーションをされることもあります。
私が訪れた日のテーマは“Magical Music”。この日はゲストとしてFindlay High School Symphony Orchestra(=フィンドレー高校交響楽団)の方々が来られていて、ミュージアムへ入るとバイオリンやチェロの美しい音色が聞こえてきました。
ステーションごとに、今回のテーマのMagical Musicに因んだ様々なアクティビティがあり、日本のコーナーもありました!フィンドレー大学の日本人留学生たちが、子どもたちに折り紙でピアノの作り方を教えたり、iPadで太鼓の達人ゲームをしたりしていました。
実際に楽器に触れることのできるコーナーや、楽器がどのようにして音が鳴っているのかを学べるコーナー、フェイスペイントをしてくれるコーナーや絵本の読み聞かせコーナー、プラスチックカップなどを使い“手作りドラム”や“手作りギター”を作ることのできるアートアクティビティコーナーも大人気。アーティストの方がその場で絵を描くDrawingもされていました。
壁には今までミュージアムでDrawingされたアーティストの方々の作品が飾られています。
リフレッシュメンツのお菓子も、マシュマロとプレッツェルでドラムスティックをイメージされていて、とても可愛いものでした。
装飾なども細部までテーマにこだわられていて、感心しました。
入場無料でどなたでも参加できるこのイベントは、全てがボランティアで成り立っていて、現在はFIFTH THIRD BANK(地域銀行)がスポンサーとなってくださっているそうです。そんな大人気のイベントですが、今回はいつにも増して大盛況で、私が訪れたときにはすでに528名もいらしていたそうです!子どもたちは皆とっても楽しそうで笑顔に溢れていて、私も沢山の元気を分けてもらいました。二階もとても可愛く、まさに絵本の世界といった感じです。
一階へと続くこの滑り台は不思議の国のアリスがテーマとされていて、子どもたちが列をなして何度も滑りたくなるほどの人気っぷり。
そしてここMazza Museumには、飛彈 文音(ひだ あやね)さんという日本の絵本についてガイドを行っていらっしゃる方がいます。笑顔の素敵なとってもフレンドリーな方で、今回ミュージアムやイベントについて丁寧に教えてくださったのも彼女でした。文音さんは、「JOI(ジョイ) プログラム(= Japan Outreach Initiative)」を通してこのMazza Museumへ2015年夏から配属されていらっしゃいます。【・・JOIプログラムとは= 2002年から国際交流基金日米センターと米国の非営利団体ローラシアン協会との共同で実施されているプログラムです。アメリカの比較的日本人の少ない地域へ、日本への関心と理解を深めることを目的にコーディネーターを2年間派遣されています。】文音さんはミュージアムだけでなく、オハイオ州の学校で折り紙の授業を行われたり、シニアセンターでお箸の持ち方や書道を教えられたり、様々な場所へアウトリーチ活動も行われています。これらは全て文音さんがお手紙を送ったり実際に出向かれてお話をしたりと自らアクションを起こし切り開かれてきたものだそうで、日本人の少ないここFindlayで、日本文化を伝えるコーディネーター(Japanese Outreach Coordinator)としてパワフルにご活躍されていらっしゃいます。
世界中の絵本作家・イラストレーターの原画が展示、保管されているこのミュージアムですが、文音さんが派遣されるまでは日本人絵本作家の原画は極めて少なかったそうです。そこで、日本人絵本作家による原画のコレクションを増やしたいと行動を起こされた文音さんの努力で、日本の絵本作家、佐古 百美(さこ ももみ)さんが「かたっぽさんどこですか?」、「おじいちゃんちのたうえ」、「とりのうた」という3冊の絵本の中から、それぞれ1点ずつ原画を寄贈してくださったそうです。
昨年2016年には、Mazza Museumへ訪れ、Funday Sundayでプレゼンテーションも行われたそうです。この3冊の絵本は英語版にも訳されていますが、日本語で読み聞かせをすることもあるそうです。日本の絵本は擬音語が多く、アメリカの子どもたちにとっては聞き慣れない音なので、とても興味深いようです。(文音さん曰く、その擬音語こそが英語に訳すことが難しく苦戦する、と仰っていました)ミュージアム内の通路にはこのように絵本の中の絵がパネルとなり飾られていて、親子で楽しめる面白いクイズのペーパーも用意されています。
たとえば、「Where is Mama Bear reading to Baby Bear?」など。また、ミュージアム内のギフトショップがとっても可愛くって…!子どもたちへのプレゼント選びには最適です。
このギフトショップのスタッフさんも、ボランティアだそうです。世界中の絵本をとおして、小さなうちから遠い国やそこに住む人たちの文化を知る機会があること、とても素敵なことだと思います。知能を刺激し、創造性を豊かにし、様々な好奇心を引き出してくれるこのミュージアムが大人気である理由がわかります。私も幼い頃は母のおかげで絵本が大好きでしたが、大人になるにつれて絵本を読む機会は減っていきます。しかし、幼い頃とはまた違った視点や感じ方で絵本を読むことができるようになった今、このミュージアムで改めて気付くこと・面白いことが多く、絵本への興味が再び湧いてきました。どこかなつかしさを感じる、あたたかいミュージアムです。
子どもだけでなく大人も心から楽しめる、絵本の魅力がたくさん詰まった見応えのあるMazza Museum。Findlayへお越しになる際にはぜひとも訪れてほしい、自信を持っておすすめできる場所です。Mazza Museum→(http://www.mazzamuseum.org/)
特派員
- アンダーソン 江里加
- 職業専業主婦
結婚を機に、2016年5月、アメリカに移住しました。
日本で教わった繊細で美味しいお菓子を広めるため、日々お菓子を作り研究している専業主婦です。
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