• 2015.06.26
  • 最新グルメスポット「メルカート・サン・ロレンツォ」~イタリア国家統一と中央市場?
「食は生活の基本」という事は万国共通です。イタリアでは、便利な大型スーパーに負けず劣らず、市民の台所を支える基本として、今なお市場(=メルカート)が日常的に利用されています。フィレンツェの中心である歴史地区にも、2つの大型生鮮食品市場があり、日曜日を除き毎日気軽に市場に通うことが出来ます。

写真1市場外観
市場の店先には、眼にも鮮やかな野菜やフルーツ、そして数え切れない種類のチーズが並んでいます。肉屋では、料理に合わせて、巨大な肉のかたまりから部位を選びオーダーカットできるため、料理自慢のイタリア人にとってはまさに腕の見せ所です。

写真2市場1F生鮮食品
写真6

中央市場は町の繁華街中心にあります。ミケランジェロ作メディチ家礼拝堂で有名なサン・ロレンッォ教会の裏手から、フィレンツェ特産の革製品など土産物の露店を覗きながら、歩いて5分ぐらいの距離。外国からのお客様がイタリアらしいお土産を探す観光スポットとなっています。

この好立地を活かして街を更に活性化させるため、フィレンツェ市と実業家が手を組み「伝統と革新」「街中心部のグルメのオアシス」プロジェクトを進め、昨年4月、中央市場がリニューアルオープンされました。

写真4リニューアル2F
写真3市場1F加工食品

1階部分は活気ある旧市場をそのままに残し、2階部分は1874年建築のモダンな吹き抜け屋根を見せながら、イタリアンデザインの軽快な内装と快適さを加えたコンテンポラリーでオープンな空間が誕生しました。141年前の鋳鉄の枠にガラスがはめ込まれた壁から差し込む天然光は、健康な食のイメージを支えます。

写真5ビールカウンター
写真7

ピザ、チーズ、サラミ、ワインやイタリアンアイスクリームなど12の食の工房を中心に、大画面でサッカーを観戦できる生ビールのカウンターから、ワインセミナーやトリュフ専門カウンター、カフェ、ショッピングスペース、料理教室の区画まで、延べ3000m2の大空間です。

24時までの営業、分かりやすい支払い、好きな店から好きなものだけを選べるフードコート、眼の前で調理される生パスタやパンなどの本格的料理。1階の市場からイメージされる素材の新鮮さなどの相乗効果で、2015年現在も人気のグルメスポットとなっています。

ところで、現在のフィレンツェ中央市場とイタリアの国家統一には意外な関係があるのをご存知でしょうか。

写真8ビットーリオエマヌエーレ2世とガリバルディの会見
近代イタリアの幕開けは、有名な青年ガリバルディの活躍とサルデーニャ国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のイタリア統一により、1861年に誕生するイタリア王国に始まります。1865年~1870年までの5年間、フィレンツェは、国王と内閣を迎えた仮の首都に遷都されました。この時期に、首都にふさわしい市街全体の近代的な再構成が計画され、新しい広場、街路の拡張、電気のシステムなど、ヨーロッパ世界基準に沿った街づくりが進みました。中央市場もこの時期に計画され、1865年から50年間に亘り、27万人も増大した人口の食の需要を満たすため、当時最高の建築士が最先端素材と技術をもって1874年に完成されました。

今年は、フィレンツェがイタリアの首都に遷都されてから150周年の記念年にあたります。益々の発展への期待を込めて、”I miei più sinceri Auguri a tutti i Fiorentini.(心からのお祝いをフィレンツェの方々へ)”

特派員

  • 木田 美秀
  • 職業西洋絵画修復家

京都精華大学日本画科卒業。2008年よりルネサンスの都フィレンツェにて起業、イタリア古典絵画修復を専門として活動し、現在に至ります。休日の癒しは、市場での美味しい食材探し、近隣の町めぐり、所属の聖歌隊で歌うことです。

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