そんな逸話のひとつにWhispering Gallery(ささやきの回廊)があります。これは風変わりな構造をした通路で、その原理について100%合理的な説明を受けてもなお、不思議に思えてなりません。
この通路はシーフードレストランとしてニューヨークでも有数の人気を誇る、駅構内の有名なオイスターバー&レストランの目の前にあるのですが、音響的にも建築学的にも不思議な要素があります。このアーチ型通路の両端に1人ずつ立ってささやき合うと、2人の距離が数m離れていても、ささやきが互いの耳に飛び込んで来ます。1m先からのかすかなささやきでさえ、アーチの反対側にいる人には叫び声のように聞こえるのです。専門家によると、その原理はいたってシンプルで、音波が天井のアーチを伝わっているだけなのだそうです。もちろん、これは真実でしょう。それでも遠く離れた人の耳にささやき声が届くなんて面白いものです。この場所はとてもよく知られているので、勇敢にもプロポーズの言葉をささやくために利用しようとやって来る人もいるほどです。
グランド・セントラル駅はいつも人であふれかえっていますが、ピークは昼ごろと夕方です。周囲のミッドタウン同様、この駅も眠ることはありません。ただの鉄道駅ではなく、アメリカの玄関と呼ばれることも多いこの駅は、ボザール建築の傑作で1913年に竣工しました。
駅舎には出資者であるコーネリアス・ヴァンダービルトの意向を汲んで、ホワイトハウスでも使われたイタリア産大理石が用いられています。
グランド・セントラル駅は世界最大の鉄道駅で、地下2階層に44のプラットホームが設置されています。
今では廃止されている61番線は、かつてはグランド・セントラル駅とその近くにある高級ホテル、ウォードルフ・アストリアホテルを結んでいた路線で、大統領や他の大物軍人など、ニューヨークに来たことを目撃されたり、知られるわけにはいかない宿泊客が使用していました。
メインロビーでは、大きなカーブを描く天井に施された12星座をはじめとするさまざまな星座を忘れずに見るようにしましょう。
当初、この巨大な天井は一般的な電球でライトアップされていましたが、頻繁に交換しなければならないため、現在では時間とお金を節約できる長寿命の光ファイバー照明が使われています。
地下2階はレストランが集まるダイニング・コンコースです。ファストフードのチェーン店から、ニューヨークNo.1の牡蛎を座って食べられる有名なオイスターバー&レストランまで、ありとあらゆるタイプのフードショップが軒を連ねています。
すでにご存知かもしれませんが、アメリカ人はとても愛国心が強く、実際どんな場所にも国旗を飾りたがります。グランド・セントラル駅のメイン・コンコースに堂々と掲げられた国旗は、9月11日の同時多発テロ後、犠牲者を忘れず、すべてのニューヨーカーがひとりぼっちじゃないことを思い出せるようにと設置されました。
グランド・セントラル駅のメイン・コンコース中央には、大きな金の時計台が目印のインフォメーションデスクがあって、地元の人たちが待ち合わせ場所としてよく利用しています。でも、時計台の下に秘密の隠し扉があり、内部に地下2階のインフォメーションオフィスにつながる螺旋階段があることはあまり知られていません。
この時計はオパール製で、クリスティーズやサザビーズといった定評のある名高いオークションハウスは1,000万~2,000万ドルの価値があると認定しています。
グランド・セントラル駅は『アルマゲドン』、『アイ・アム・レジェンド』、『メン・イン・ブラック』、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』、『カリートの道』、『ボーン・コレクター』、『ゴシップガール』、アニメ『マダガスカル』など、数多くの映画やテレビドラマ、アニメにも登場しています。