• 2025.10.24
  • キルギス人旅行者から見たヨーロッパと日本
友人に「ヨーロッパと日本、キルギス人にとって飛行機で行くのが簡単で安いのはどっちだろう?」と尋ねられたら、どちらも訪れたことがある私は笑顔で答えるでしょう。ヨーロッパでは、冬のタリンの静かな路地を歩いたり、ブダペストの地下鉄で迷子になったり、バルセロナのゴシック地区でコーヒーを味わったり、ワルシャワの広場を散策したりしました。そして、地球の反対側にある日本では、東京から福岡までを一度ならず三度も横断しただけでなく、修士号取得のために2年間滞在し、忘れられない時間を過ごしました。こうした経験は、単なる外国への訪問に留まらず、私の人生の一部となっています。
まずは飛行機事情から話を始めましょう。なぜなら、ビシュケクに暮らす人々にとって、航空券の取得は常に最初に立ちはだかる壁となるからです。ワルシャワ、バルセロナ、ブダペスト、タリンを訪れた際は、いつも以下の流れでチケットを手配していました。まず、基本の手荷物料金が含まれ、キャンセル時のペナルティがない往復航空券を探します。早めに予約すれば、15~20キロの手荷物の預け入れとキャンセル時に少なくとも料金の一部を払い戻してくれるオプションが付いた航空券を、およそ650~900ドル(約9.7万~13万円)で購入することができました。航空券予約サイトには300(約4.5万円)ドルや400(約6万円)ドルといった魅力的な価格も並んでいますが、それらはすべてまやかしにすぎません。実際には受託手荷物はなし、変更も払い戻しも不可、というお粗末な内容なので注意が必要です。実際に使い勝手のいいチケットは高くなりますが、それでも許容範囲でした。
日本への航空券は、少し事情が異なります。初めて東京を訪れた時には、航空券の価格の高さに驚きました。手荷物の預け入れが可能で変更にも対応している航空券ですと、ビシュケクから東京までは最安値でも900ドル(約13万円)、予約が遅くなった場合や全額返金可能な航空券であれば2,000ドル(約30万円)を超えることもありました。私にとっては大きな投資でしたが、その後も何度も日本に足を運んでいます。なぜなら、日本では他の国では味わえない経験ができるからです。学び、成長し、そして自分の人生を別の角度から見る機会を得ることができる場所なのです。
避けて通れないもうひとつのハードルが、ビザの申請です。ヨーロッパを訪れる際は、毎回、銀行の残高証明を取り寄せ、ホテルを予約し、旅行保険に加入し、シェンゲン・ビザ(シェンゲン協定加盟国への旅行、出張などを目的とした短期滞在ビザ)の発行を数週間待たねばなりませんでした。すっかり慣れたものの、この手続きは決して容易ではありません。対照的に、日本への渡航手続きは非常に簡単でした。観光ビザの取得に必要なのはほんの数種類の書類と少額の手数料のみで、発行までの期間も1週間ほどです。学生として入国した際はさらに簡単でした。キルギス国民にとって、日本のビザの手続きは非常にわかりやすいと言えます。
現地に行ってみると、ヨーロッパと日本の違いはさらに際立ちます。ヨーロッパ、特にワルシャワとブダペスト、タリンでは、あまりお金をかけずに滞在することができました。電車やカフェ、ユースホステル、さらにはアパートまでがお手頃価格でした。バルセロナでは物価が上がるものの、計画的に過ごせば問題ありませんでした。しかし、日本では、飛行機を降りた瞬間からプレミアムな体験をしているかのような気分になりました。狭いながらも汚れひとつない清潔なホテルの客室、数えきれないほどのコンビニエンスストア、定刻ぴったりに運行するけれども短距離フライト並みの価格の列車など、あらゆるものが高価です。費用はかかったものの、川沿いの桜や夜明けの静まり返った寺院、初めて日本語を話した瞬間など、何事にも代えがたい思い出を作ることができました。
さて、「ヨーロッパと日本、どちらが良いか?」という質問に戻りましょう。個人的な経験から言うと、ヨーロッパは現実的な選択でしょう。航空券は安く、チケットの種類も豊富、そしてひとつのビザで複数の国を訪れることができます。一方、日本では「魂の旅」を経験することができます。ビザの取得は容易で、物価は高いものの、今までとは全く異なる体験ができ、世界の見方が変わります。
次はどこへ行こうかと悩んでいるビシュケクの人々に対する私のアドバイスはシンプルです。選択肢の多様さと価格を重視するならヨーロッパ、ひとつの文化を深く体験してみたくて予算に余裕があるなら日本をお薦めします。いずれにせよ、ネットに掲載されている最安値の航空券に惑わされてはいけません。手荷物の預け入れ料金が含まれ、変更が可能なチケットは高くなりますが、状況や旅行の予定が変わった時のために支払う価値は十分にあります。
そして、忘れてはならないのが、空港を出て初めて訪れる国の香りを感じた瞬間、出発までに費やした金額やビザの手続き、計画に要した苦労はすべて消え去ってしまうということです。これこそが、私が旅を続ける理由です。ワルシャワであれ東京であれ、どこへ行っても新たな驚きが待っているので、旅はやめられません。

特派員

  • ダニアール・バクチエフ
  • 職業公務員

はじめまして。ダニアールと申します。公務員です。キルギス共和国に住んでいます。趣味は本を読むことです。また、旅行やいろいろな食べ物を味わうことも好きです。よろしくお願いします。

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