• 2018.07.13
  • 一人はみんなのために、みんなは一人のために!
ロンドン市内に一体いくつの非営利組織があって、クリスマスの時期に街角でキャロルを歌うことから、公益目的のレースに参加することまで、さまざまな募金活動に積極的に参加しているロンドン市民が年間でどのくらいいるのかなんて、ちょっと想像がつきませんよね。
ここイギリスの首都では、プライベートか公的かを問わず、寄付金集めのイベントを実施する権利を与える証明書を市議会が発行することになっているので、誰でもこうしたイベントを主催できます。
何もかもすごく道徳的で、いかにもイギリス流ですよね。
皆さんの中には、クリスマス気分が消え始めたら、チャリティーイベントも次の年までなくなるんじゃないかと思う人もいるかもしれません。ところが、私もびっくりしたのですが、イギリスでは途切れることなく常に慈善団体に寄付がなされています!
これは素晴らしいことです。何しろ、すべては善意のためですからね。
少なくとも年に1度は、好みの慈善活動を選び、誰もが募金集めに努力する、そんな姿を目にできるのはいいものです。
ちなみに、ここでいう努力には超人的努力(マラソンのような)、普通の努力(ケーキやマフィンを焼いてオフィスに持参するなど)、さらには笑いものになる恐れのあるファンキーな努力(ゴリラ・ランを楽しむなど!)といった、あらゆる努力が含まれています。
病気と闘う知人をたたえるためとか、シンプルに特定の組織に貢献するためというのが動機としては多いようです。
そして、これは会社勤めの人に限った話ではありません。大企業の中には、従業員を地域社会を支援するボランティア活動に積極的に参加させるため、毎年恒例のイベントを主催するところもありますけどね。
イギリスではチャリティーイベント自体が組織、これが実態なのです。
ボランティアや後援者を惹きつけようと、チャリティーキャンペーンは独創性やオリジナリティーを競い合っていて、広告掲示板には毎月毎月、こうしたイベントの宣伝ポスターが貼られています。
それではここで、人気の高い毎年恒例のイベントをリストアップしてみたいと思います。
Go Sober in October(10月はしらふでいよう):10月は禁酒月間とし(これは尋常じゃない努力に分類されるはず)、浮いたお金でがん患者に募金する。
グレート・ゴリラ・ラン:参加者がゴリラの着ぐるみを着て走るマラソンレースで、絶滅危惧種の保全が目的(ゴリラに限らない)。
モーベンバー:口ひげをそらずに蓄え、自身が広告塔となって前立腺がん研究のための募金を集める。
モーニング・コーヒー:個人の家やオフィスで手作りの朝食をふるまうというもので、すでに1千万ポンド(約15億円)を超える募金を集めているキャンペーン。
主催者はケーキ、マフィン、その他のスイーツ類を朝食用に準備し、それを食べた参加者は特定の趣旨に賛同し、びんに募金します。
大義のあるボランティア活動や寄付金集めでは、さまざまな背景を持つ代弁者たちも訴えたいことはひとつであり、同じメッセージが伝えられます。
最近のイベントには、特定の現実を黙認したくない人の願いを束ねるものもあり、Out of the Ghetto(ゲットーから抜け出そう)と呼ばれています。これは現代の苦役に反対する取り組みです。
不当な低賃金労働や移民に対する搾取など、秘密裏に実施されていながら、世界を揺るがすほど大きな影響を及ぼしている不当行為に立ち向かうことがねらいです。
42kmを駆け抜けるロンドンマラソンは、伝統的にヨーロッパ屈指のチャリティ色の強いレースです。
走ることだけでなく、あらゆるスポーツの発展・促進を目指していますが、この他にも人道的目標や地域社会に関連した目標も掲げています。
ロンドンマラソンは世界のマラソンレースの中でも、メディアに対する影響力が最大のイベントのひとつです。参加希望者は毎年20万人以上にのぼりますが、イギリスの首都を走るための抽選にかろうじて当選できるのは、応募者のたった20%しかいません。
ロンドンマラソンにはさらに重大な役割があり、世界でも慈善事業への寄付金の配分額が非常に高いイベントでもあります。
1981年に創設されたこのマラソンの寄付金集めには、実にたくさんの慈善団体が関わっています。
この年はLondon Marathon Charitable Trust(ロンドンマラソン慈善信託)が設立された年でもありました。インフラやスポーツプロジェクトに投資する目的のもと、マラソンによって集まった寄付金を永続的に管理・分配する慈善団体です。
発足以来、集めた寄付金総額は6千万ポンド(約87億円)を超えていて、市内で約1,100件のプロジェクトを立ち上げました。
テニスコートの改修から、クリケットやローイングなどの屋内・屋外の運動施設の改装、さらには若者や運動をしない人を巻き込むための構造改革まで多岐にわたります。

結局、「団結すれば立ち、分裂すれば倒れる」というわけです。


車椅子テニスはロンドンマラソンの資金調達イベントによって実現した多くのプロジェクトのひとつ

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 年齢子(ねずみ)
  • 性別
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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