長い歴史を重ねる中でこの国ではさまざまなお祭りや行事が取り込まれてきました。とはいえ、誰もがそういったお祭りや行事について知っているわけではありません。
イギリス人はお祝い行事が大好き。何でも祝おうとするのが、ちょっとした文化になっています。
こうした文化を無用の長物のように思う人もいるけれど、気持ちをいつまでも若く保ち、人生そのものを謳歌する一つの方法だと私は思います。
そして、とても必要なことです。
特に今、この歴史的に見ても大変な時代には。
さてこの春、私が参加した最初のイベントの一つに、伝統行事「メイポール・ダンス」があります。
民族舞踊の一種で、繁栄の象徴として立てられたメイポールと呼ばれるポールを中心に輪になって踊ります。
昔ながらのダンスでは、女性と男性が互いに反対方向に踊り、男女が交差してポール上にリボンや蔓飾りを絡みあわせていきます。
ダンスの前にはメイクィーンが選ばれ、白いドレスをまとった女の子が人々に花びらを投げかけ、このあとダンスが始まります。
昔、人々が階級の違いを忘れて皆で楽しむ機会としてこのダンスが生まれたと言われています。
このほか、「イングランド的」な祝い方としては、さまざまな機会にグリーティングカードを送り合うという方法もあります。
私もカードを送るのは好きですが、イングランドではカードの種類が無限にあります。
3Dポップアップカード、パズル型のカード、こすると香りのするカード、特注のカード…ほぼ何でもあります。
そもそもグリーティングカードは商品ですから、販売するにはそれなりにマーケティングが必要になってきます。
イギリスではお祝い事や行事に関連したマーケティングやビジネスが非常に盛んで、祝日という祝日は今や商戦のための祝日と化しています。
イースターやバレンタインデー、アースデー、父の日…秘書の日まで(!)、お店にはいつも何かしらイベントの飾り付けが。
そしてもちろん、イベント毎にそのイベント専用のカードというものがあります。
あらゆる機会にグリーティングカード
クリスマスや誕生日、そのほか特別なお祝いに送られているグリーティングカードは19世紀末、イギリスの郵便制度設立に貢献した忙しい実業家の依頼から生まれたようです。実業家が友人に送るクリスマスカード約1,000部の製作を依頼し、グリーティングカードが誕生したと言われています。
最初のカードには「Merry Christmas and Happy New Year to You」と書かれていたようです。
とってもスタンダードなフレーズですね。
また他にも説があり、クリスマス休暇の計画を手紙やカードに書いて先に家族に発表しておき、クリスマスまでのアドベントシーズンを楽しみたいという人々の願いからグリーティングカードが生まれたとも言われています。
クリスマスはここイングランドではとても大切な休暇であり、このシーズンのグリーティングカードは外せません。でも今は基本的に、用途やテイストを問わずどんなグリーティングカードでも買うことができるんです。
一方で、イングランドの人々は環境問題に対する意識が高く、例えば無駄な紙の印刷などといった紙の無駄遣いにも注意を払っています。でも、グリーティングカードは無くてはならないものなのです。
デジタル化が進んでも、イングランドの人々が友人や親戚に送るのはやはり「本物」のグリーティングカード。彼ら曰くそのほうが「おしゃれ」だからだそうで、また、一人ひとりの相手への気持ちがこもっていて、気が利いていると思うからです。
そうですよね、心のこもったカードはもらう側も嬉しいですよね。
何となく昔っぽい感じがして、伝統ある本物なんだなと思います。