• 2022.10.19
  • 王室の一時代、終わりを迎える
英国の女王エリザベス2世が逝去されたニュースは世界中に伝わりました。
このニュースが英国連邦に、何よりも英国に、特にロンドンに大きな衝撃を与えたことは間違いありません。
女王については書くことが山ほどあるでしょうし、すでに多くのことが書かれたり語られたりしています。ここでは女王の死が英国の人々にどのように受け止められているかを中心に書いてみたいと思います。
まず、英国人がこうしたときに街で感情を見せることに驚きはしなかったものの、感銘を受けました。
この国の人たちは感情を見せないとか「冷たい」などと思われがちですが、自分たちの女王の逝去については情にもろい部分も見られ、先日はロンドンでも涙ぐんでいる人々がいました。
また、英国人は女王に対して、国民としての誠実な愛情だけでなく、家族の大切な一員のような献身的な愛情や賞賛や尊敬の念を抱いていたことも知りました。
では、エリザベス女王ご逝去後の数日間について少しご紹介しましょう。

まず、英国の大規模な王室行事では新旧さまざまな伝統が組み合わされることが多く、エリザベス女王のために行われた記念式典や葬儀も例外ではありません。
近年行われてきた王室行事の歴史をひもとくと、王室の人気と存在意義を守り続けるために伝統的な部分を大切にしつつ、新たな部分も取り入れて行事が執り行われており、長年にわたり君主が国全体を代表する役目を果たすことが主題とされてきました。
国民の服喪は、エリザベス女王が9月8日に亡くなってから同月19日の葬儀をもって終了し、当然ながら楽しいイベントではないものの、国の一大行事となりました。
式典については、女王自身が短めの時間で執り行われることを希望し、参列者にとって「退屈な」葬儀にならないことを願っていたそうです。
葬儀には大勢の人が押し寄せ、離れたところから一連の儀式を見守りました。一方で私が最も感銘を受けたのは、「一般市民」も最高24時間も並んで棺の前で弔意を表し最後のお別れができたことです。多くの、おそらく大半の人にとって、エリザベス女王は唯一無二の英国君主であり続けることでしょう。
弔問に訪れる人々の列は10kmを超える長蛇になり、議会議事堂のウェストミンスターホールからテムズ川対岸(南岸)のサザークパークにまで及びました。
アプリにサインアップすれば行列することなく物事をすませられるご時世に、これはまるで昔に戻ったようでしたが、こうした弔問の列に並んだだけで即座に厳かな気持ちになりました。
明らかに形式的な手続きが不要な貴族や権力者でないなら、一昔前と同じように一般市民は弔問の順番を待つよりほかなかったのです。
今回の弔問では根気や忍耐自体が貴重な体験でした。また、その集大成として、エリザベス女王へ敬意を表して一礼し、棺を見て尊敬の念を示した所作によって、女王への単なる最後の賛辞というだけでなく、最も心のこもった弔意を表しました。
一連の弔問は普段の慌ただしい現代の生活から逃れ、時間が優先されない昔にしばし帰ったかのようにも思えました。
エリザベス女王は人々から愛され長生きされましたが、その存在は国家の長や君主にとどまるものではありません。
何世代にもわたる時代の真のシンボルいわば先導者でもありました。ですから、女王の訃報をメディアが前例のないほど大きく報道したのも当然のように思えます。
世界中が女王の死を悲しんだのは、長寿であったからではありません。
エリザベス2世は「私たちがこれまで慣れ親しんできた」女王よりも、はるかに女王らしい女王でした。
バッキンガム宮殿で暮らした唯一の女王で、厳しいけれど情が深く、旅が好きで、頭が良くて…唯一無二の存在でした。


女王陛下のご冥福を祈って

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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