英国では、バレンタインデーは恋人たちのためだけの日ではありません。兄弟や姉妹への愛、友情、家族の繋がりを祝う日でもあります。
この国では、恋人たちが「バレンタインデーカード」とも呼ばれる、愛の言葉を綴った絵葉書やカードを交換する伝統があります。
少し調べてみたところ、こんな発見がありました。
カード交換の伝統は18世紀に始まり、デジタル化が進んだ現在でも続いています。
また、短い愛の言葉が書かれたハート型のお菓子は、英国でも米国でも人気があります。
英国では「ラブ・ハーツ(Love Hearts)」(訳註:「conversation hearts」とも)、他国では「スイート・ハーツ(Sweethearts)」と呼ばれており、ビクトリア朝(1837~1901年)に作られていた「カンバセーション・ロゼンジ(conversation lozenge)」の現代版といえます(訳註:一種の薬用キャンディーで「汝の両親を敬え」「強い酒は控えよ」などのメッセージが書かれていた)。基本的には薄く平たいお菓子で、メッセージや愛を表す引用句が印字されています。
さて、バレンタインデーの祝祭の起源は、どうやらローマ時代まで遡るようです。
古代ローマでは、ローマ神話の神ルペルクスを称える祭りが2月に行われていました。上半身が人間、下半身は山羊の姿をした角を持つ牧畜の神で、人々は豊穣を願いこの神に祈りを捧げました。
やがてキリスト教が登場すると、ルペルクスの神話は異教的であるとして廃止され、代わって、若い恋人たちを守って殉教した聖バレンタイン司祭にちなんだ祝祭の日が創設されました。
こうして中世に入るころには、聖バレンタイン司祭が殉教した日、2月14日が愛の祝祭として認識されるようになりました。
中世のイングランドでは、バレンタインはすでに重要な伝統行事と見なされており、男性は愛する人に愛のしるしを贈りました。地域によっては、愛する女性の家の扉をノックし、贈り物の包みをその場に残してすぐに立ち去るという慣習もありました。
現代では印刷技術や活版印刷がごく当たり前に普及していますが、バレンタインカード、すなわちロマンチックなフレーズを特色とするグリーティングカードや愛のカードが印刷され誰かに贈られるようになったのは、1700年代に入ってからのことでした。
ロンドンではバレンタインデーの特別セールも
こうした愛のメッセージは、英国では人目を忍ぶ恋のやりとりとしてひそかに一般化し、禁欲や厳格主義を倫理観に持つ英国清教徒から疑惑の目を向けられることが少なくありませんでした。
17世紀に入っても、未婚の女性がバレンタインデー前夜、未来の結婚相手を占うためにバラ水に浸した月桂樹の葉を枕の上に並べたり下に敷いたりして、聖バレンタインに祈りを捧げる慣習がありました。
2月14日の朝、女性たちは窓の外を見て行きかう人々にハンカチを振ります。
当時のならわしで、最初にその女性を見た独身男性が夫になることを望んでもよいとされていました。
現代の英国では、バレンタインデーは恋人たちにとってとても嬉しい休日です。
レストランやスパのプランを予約し、チョコレートや花などの贈り物を交換します。
ロンドンでよく使われるのがカフェや公園、レストラン。恋人たちは想いを伝えあい、贈り物を交換します。贈り物にはシェークスピアの言葉を添えるのが人気です。
ところで、誰もが2月14日に愛を祝うわけではありません。ウェールズでは1月25日、また別の守護聖人、聖ドウィンウェン(Saint Dwynwen)と共にお祝いします。
日は違っても愛する人に贈り物をする慣習は変わりません。ウェールズの水夫は航海中、無事の帰宅を願って愛する人のために木製のスプーンを彫るという古来の慣習があり、これにならって男性は愛する女性に自分で彫った木製スプーンを贈るのです。
私自身は、バレンタインデーが少し商業化しすぎていると思っていますので、この日は大したお祝いはしません。
正月が開けると、スーパーや花屋、ショップは早くもバレンタインデーの商品を店頭に並べ始めます。2月中旬を迎えるころには、人々はすでにハートの形とバラにうんざりしています。
愛は年中、時期を問わずお祝いすべきものであり、パートナーや愛する人にはサプライズで贈り物をするのがいいと私は思います。
ロンドンのレストランでも2月14日は特別メニューが用意されています。お一人さまの外食には向きませんし、一人で行けば顰蹙を買うでしょうね!