英国人は冷静で生真面目過ぎる、なんて思っていましたか? 実はそうでもないのです。
今も多くの人が、友人や家族にいたずらや悪ふざけをしてこの日を楽しみ、過去には実際にニュースとして報道されたことまでありました。
そこで記事を何本か読み、これまでに仕掛けられたエイプリルフールならではの最高のいたずらをいくつか集めてみました。
調べているうちに、普段は至って真面目な、あの有名なBBCチャンネルがエイプリルフールの伝統を大切にしていることも知りました。
1. 天文学的ウソ
1976年、他でもないBBCラジオが、惑星の特殊な配列の影響により地球の重力が一時的に減少すると報じました。
発案したのは親しみあふれる天文学者で、このジョークの企画は見事成功しました。
放送後、局には熱心なリスナーから惑星の影響をすでに感じたという電話が殺到しました。
これぞ暗示の力、ですね。
2. エイリアンがやってくる
1989年、億万長者のリチャード・ブランソンが空飛ぶ円盤型の熱気球を作り、ETに扮した俳優を乗せました。
ストロボライトを取り付けた熱気球が、4月1日早朝、空に浮かびました。ロンドン郊外の高速道路上を走る多くの人がこれに気づき、軍に通報が入り警察が出動するほどの大騒ぎとなりました。
気球が着陸し、もくもくと出て来る蒸気の煙が立ち込めるなか偽物のETが現れると、観衆は思わず息をのみそうになりました。
当のブランソン氏は、現場にいたユーモアセンスに乏しい警察官たちに逮捕されそうになったそうです。
3. スパゲッティがなる木
1957年、こちらもBBCが、「スパゲッティ農業」を営む幸せな家族が収穫中とおぼしき様子を収めたニュース映像を紹介しました。
画面には両親と子どもたちがスパゲッティの木から「熟した」スパゲッティを収穫しているシーンが映し出されました。
ジョークの最後に、自宅で自分たち専用のスパゲッティ・メーカーが作れる方法を語り、収穫したスパゲッティをトマト缶に入れれば出来上がり、皆さんお試しをなどと言っていました。
当時英国ではスパゲッティがまだあまり知られていなかったからか、あるいは今ほど一般的な食品でなかったからか、このジョークにも大勢の人が騙されました。
今年はこういった特別ないたずら企画のニュースを耳にしていません。この数年、私たち皆にとって大変な時期が続いていたからでしょうか。あるいは、最近はフェイクニュースが出回りすぎて取り締まる規制も多いために、いたずらが楽しくなくなったとか、法に違反するからとかいう理由でしょうか。
さて4月1日の起源については、中世の祝祭や、古代ローマで3月の終わりに行われていたヒラリア(「楽しい」を意味するラテン語)と呼ばれる祭事など、春の祭りと関係があるという説があります。
また、同じ時期に行われる、インドのカラフルな楽しい祭りである、ホーリー祭に関連しているという説もあります。
4月1日当日は(英国では)独自のルールがあるようです。ジョークが許されるのは正午の時報までとされ、その時間を過ぎると「ネタばらし」をしなければならないことになっています。
正午を過ぎてもまだジョークを言っていると、本当の「四月馬鹿」だと思われてしまいます。
英国の小道具を専門に扱う一部のショップでは、いたずらグッズが今も販売されています。
私も子どもの頃イタリアで、こうしたおもちゃで遊んでいたことを思い出します。
ここロンドンでも(この街には本当に何でもあります)少し見かけました。悪臭のする液体が入った瓶、かゆみが止まらなくなる不思議な粉、握ると手にピリッと電気が走る装置、水に入れるとミミズに変わる小さな錠剤、バネで指が挟まれる仕掛けになっているチューインガムなどがありました。
大笑いすることは大切ですし、誰もが笑いを必要としていますが、安全であること、一人一人を尊重することも忘れないでいたいものです。