• 2025.04.08
  • ラッキー・ペニー
どの国にもその国ならではの迷信や古くから信じられてきた言い習わしがあります。面白おかしいものもありますが、どこか文化に深く根差しています。
一つの事物に対しても国によってとらえ方はさまざまで、正反対の場合すらあります。
例えば、イタリアでは黒猫は不吉とされていますが、イングランドでは黒猫が目の前を通ると悩みごとの終わりを意味するのだそうです。

イングランドには次のような古い言い伝えがあります。
Find a penny, pick it up and all day long you’ll have good luck.
(1ペニー貨を見つけて拾ったら、その日一日幸運が訪れる)
本当のところは定かではありません。疑念を抱く人もおられるでしょう。私も、歩道や地下鉄の車両、公園でペニー貨(1ペニーだけでなく2ペンスでもうす汚れた硬貨があれば)がキラリと光るのを見つけるたび、かがんで拾い、幸運が来るのか試しています。
この言い伝えには続きがあり、硬貨が表を向いていれば幸運を呼ぶけれど、裏を向いていればひっくり返して次に来る幸運な人が拾えるようにしておくのだと、いう説もあります。
古代では、銅や銀など硬貨に使用される金属は魔力を持っており、人々を災難から守ると考えられていました。
善と悪の二元論の概念すらすでに存在していたようで、硬貨の表裏で運・不運が分かれるという部分にその考え方が現れています。
このほか、英国のコインにまつわるものでは、花嫁は結婚式当日に「何か古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの…と靴に6ペンス貨」を身に付けていると幸せになれる、という古くからの言い伝えもあります。6ペンス銀貨は、王立空軍のパイロットの間でも幸運のお守りとされてきました。第二次世界大戦中、パイロットはバッジの下や操縦免許証などに縫い付けていたそうです。また、クリスマスプディングなど伝統的なお菓子の中にもこの銀貨を隠す風習があり、見つけた人が勝ちとされ大きな幸運が訪れると言われています。

英国では1ポンドは100ペンスに換算されます。硬貨は1ペニー、2ペンス、5ペンス、10ペンス、20ペンス、50ペンス、そして1ポンド、2ポンドまであります。
紙幣は5ポンドから10ポンド、20ポンド、50ポンドまで。現在はカードでの支払いが好まれ、現金を使う機会が減っていますので、50ポンド札はできるだけ持たないようにしたほうが賢明でしょう。
長らく紙製の紙幣が使用されてきましたが、2016年から2021年にかけてプラスチック素材を用いたポリマー製の紙幣発行が段階的に進められ、現在ではポリマー製のみが発行されています。また、紙製の旧紙幣は2022年以降、使用できなくなりました。
紙製の紙幣の製造技術は数百年の間に大幅に進化し、耐久性と安全性が向上した結果、偽造が格段に困難になりました。しかし、近年では、こうした伝統的な紙幣からポリマー製の紙幣へ切り替える国が増加しています。

ポンドは国際貿易や国際金融部門で幅広く使用されており、外国為替市場において重要な位置を占めています。これは英国の現在までの歴史的な経済政策の影響と、ロンドンが世界の金融の中心として重要な役割を担っていることが大きな理由でしょう。
英国は、銀行業務や保険業、資産管理を含む世界的な金融サービスにおいて主要な役割を果たしています。ポンドの価値が変動すれば、世界の金融市場や投資の流れに多大な影響を及ぼす可能性があります。
ビジネスでは、ポンドは国際貿易や海外投資・契約において安定性や信頼性の高い金融手段とされています。また、英国内外で事業を展開する企業にとっては、ポンド建てでの取引により為替変換の手間が省け、コスト削減や会計の簡素化ができます。

現在の通貨制度(正称「スターリング・ポンド」)は、770年頃アングロサクソン人がスターリングシルバー(重量比で銀の含有率92.5%)を用いてペニーと呼ばれる硬貨を鋳造したのが始まりです。ペニー貨240枚が重さ1ポンドに相当したことから、スターリング・ポンドと名づけられました。
その後、1066年、ノルマン人によって征服され封建制度が導入されると、標準的な通貨単位としてポンドが使用されるようになります。「シリング」や「ペニー」の単位もこの頃始まりました。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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