• 2025.10.22
  • ロンドン――持続可能な大都市を目指して
ロンドンはサステナブルな街です。カーボンニュートラルを目標に掲げた劇場から、廃棄物ゼロを目指すマーケットに至るまで、あらゆる角度から未来の都市像を見直しつつあります。
世界でも有数の活気ある大都市の心臓部では、新たな革命が静かに、深く根を張るように進行しています。
18世紀に産業革命を牽引したこの街は、今や2030年までにネットゼロを実現するという、さらに大胆な転換を遂げようとしています。
気候変動をめぐる議論が世界中で続くなか、ビッグベンを擁するロンドンではすでに持続可能な未来の構築に着手しており、人口800万人を超える巨大都市であっても持続可能な都市のモデルとなりうることを実証し始めています。
約2000年の歴史を誇るロンドンでは、かつて産業革命が街や広場にもたらした変革に匹敵するほどの大きな転換期を迎えています。
かつては石炭の煤煙に覆われた街は今、新たな都市の物語を紡ぎつつあります。ザ・シャードやザ・ジャーキンのような高層ビルは、経済力の象徴にとどまらず、持続可能な革新の灯台として、より緑豊かな未来への道を照らす存在となっています。
未来に向けた都市の基本構想が日々形を成すように、2030年までにネットゼロを達成するプロジェクトは、ロンドンという街を根底から再構築する過程にあるのです。
このプロジェクトは、単なる理念の表明ではなく、都市の細部にまで織り込まれた具体的な一連の取り組みです。すでに、ヴィクトリア朝様式の住宅がエネルギー効率に優れた設備に転換されており、歴史的建造物にも環境保護の可能性が秘められていることが実証されています。
現在、すでに200万台ものヒートポンプが家庭の新たなエネルギー源として稼働しており、まるで生物の体をめぐる血管のように、地域の熱供給ネットワークとして機能しています。
その結果、暖房の需要は40%も削減され、街自体が生命線となるエネルギーを節約する術を身につけたかのようです。
こうした持続可能性を追求する革命は、大規模なプロジェクトだけではありません。市民の日々の小さな行動にも確かに表れています。
毎朝、何百万人ものロンドン市民が通勤に車ではなく地下鉄など公共機関を使用しています。こうしたささやかな行動で、CO2排出量の削減に貢献することが習慣となっているのです。


ロンドンは都市から緑を守る街へ

ファーマーズマーケットは、ガーデンのように街の至る所で賑わいを見せ、地域の持続可能性を支える新たな拠点となっています。
ここでは、人々は採れたての農作物の香りが漂う屋台に集い、活気ある会話を楽しみ、大都市の中心部にいながらも土地とコミュニティとの繋がりを育む貴重なひとときを守り続けています。
共同のリビングスペースから、持続可能なぜいたくとは何かを見直しているエコホテルまで、街全体が都会型ホスピタリティの歴史に新たな章を刻み始めています。
こうした空間は単なる寝床や職場以上の役割を担い、都市を体験する新たな方法を模索する生きた実験室であり、省エネから廃棄物管理まで、一つ一つの選択が街の持続可能性をより幅広くとらえた物語を支える大切な要素となります。
現在、ロンドンで取り組まれている緑の革命(Green Revolution)では、職場においてさまざまな試みが実施されています。
その一つ、東部のハックニー区にあるザ・フィッシャリーズ(The Fisheries)は、かつてヴィクトリア朝時代に魚の貯蔵所であった建物を活用した施設で、都市の産業遺産が持続可能な形で再開発されうる可能性を示した優れた例といえるでしょう。
雨水の再利用システムや太陽光発電を備えたこの施設は、職場が変革の先駆けとなりうる可能性を体現した良いモデルとなっています。
また、カムデン特別区のバックストリート・マーケットは小売業の未来を描いてみせた一例で、80個の輸送コンテナを再利用して環境に配慮したショップの集合体を構築しています。
マーケットはプラスチック材不使用であるばかりか、食品廃棄物を電力に変換して施設全体の電力をこれで賄っています。
ロンドンでは市民一人につき年に平均200本以上のペットボトルを購入しており、サステナビリティを目指す戦いはまさに一滴ずつ、牛歩のごとく進められています。
サディク・カーン市長が市内各所に設置した公共のウォータークーラー(冷水機)は効果を上げ、何百万本というペットボトルの廃棄物が削減されました。
さらに、太陽が緑化された屋上やソーラーパネルの上に沈もうとし、屋上のミツバチの巣箱やガーデンを照らすのを見ると、新生ロンドンの誕生を目の当たりにしていると思わずにはいられません。
何千年もの歴史との深い結びつきを守りつつ、果敢にも歴史に新たな章を刻もうとしているロンドン。より大きく、より賢く、より持続可能性の高い都市への道を歩もうとする巨大都市の新章の幕開けです。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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