• 2016.12.13
  • 解剖学コレクション
束の間の夏が終わり、秋の到来に浸る間もなく、ベルリンはまた寒い季節になっています。外は寒いので、屋内で出来る活動を探してみました。
博物館が多いベルリンでは、屋内で体験できることも色々あります。でも今回は、少し隠れた場所を紹介したいと思います。
それは、ベルリンで最も有名な病院、Charité (シャリテー)の中にあります。
シャリテーは、元々はペスト隔離病院として、1710年に町の外に作られました。しかし、のちにベルリンが広くなるとともに市の外縁も外へ広がり、今は街の中心に位置します。
1727年には、医者を養成するための軍所属病院に変わりました。そして創立から丁度100年後、医学部のある大学が作られました。
ビルのような高層の近代的な建造物もありますが、1896年から1917年にかけて建設された赤い煉瓦造りの建物は、やはりシャリテー独特の印象があります。

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中央駅からシャリテーへの眺望

シャリテーには、100年以上の歴史を誇る博物館が併設されています。
これは、白血病の発見者として有名なRudolf Virchow(ルドルフ・フィルヒョウ)によって1899年に設立されたものです。
博物館のコレクションである標本は、1901年には既に23066個に及んでいました。1914年までは、この博物館には一般の人も入ることができました。
第二次世界大戦以前は35000個あった標本も、終戦時には1800個しか残りませんでした。 現在の医学歴史博物館として再開されたのは、1998年のことです。
この博物館では、医学史とシャリテーの歴史の他に、様々な標本を見ることが出来ます。繊細な人は、これらの解剖学コレクションを見るときには、少し覚悟が必要かもしれません。
コレクションの一部は、この博物館の他にWaldeyer Haus(ヴァルダイヤー・ハウス)でも見ることができます。そこには解剖学部のコレクションがあります。

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ヴァルダイヤー・ハウス外観

誰でも自由に入りコレクションの一部を見ることができます。展示物にはテーマに合わせて、短い説明がついています。
コレクションは、かなり高度な解剖学の参考資料であり、医学生が自習できるよう陳列ケースの回りには机が80席もあります。

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来館者は少なく、ひっそりとしている。
写真提供:Charité – Universitätsmedizin Berlin

建物は、1917年まで解剖学部長をしていたWilhelm Waldeyer (ヴィルヘルム・ヴァルダイヤー)に因んで名付けられました。コレクションの中でも物議をかもしている部分は、彼の時代に収集された標本です。問題となっているのは、植民地時代に集められた全世界からの骸骨と頭骨で、これらは当時、人種主義的な疑似人類学研究のために使われました。このコレクションで物議をかもしている展示物の一例はペルー人のミイラです。
この問題の標本群は、Charité Human Remains Project(シャリテー遺骨プロジェクト)で3年間に渡って調査されました。

このプロジェクトの目的は、遺骨などの遺留物を、ナミビアなど出身国へ返すことです。The Leiden Declaration on Human Anatomy / Anatomical Collections (ライデン・人体解剖学 / 人体標本に関する宣言)という人間の遺骸の扱い方に関する国際的な宣言が、この活動のベースになっています。私がこのコレクションを見に行ったのは、そこにあるLanger Kerl(ランガー・ケアル、長い奴)の骸骨を見るためです。ランガー・ケアルはプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世の近衛兵を表す口語表現です。この巨人連隊のでは、1.88m以下の身長では戦闘要員として不適格であるとされました。

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この骸骨は1880年に、わずか28歳で亡くなったランガー・ケアルだとされています。この骸骨は身長が2.23mもあります。ワルダヤー・ハウスではもちろんこのままではなくて、ガラス張りの箱に入って展示されます。
写真提供:Charité – Universitätsmedizin Berlin

もちろん医学歴史博物館の方が多くの情報を得ることができますが、ヴァルダイヤー・ハウスのコレクションは、独特の雰囲気があり、静かに個人的な時間を過ごすことができます。静かな環境で勉強をしている学生も居ますから、見学者も静かに見て回ります。

最後に、コレクションの写真を提供して下さったシャリテーの担当者の方に感謝いたします。

特派員

  • マーラ・ グローナー
  • 職業リサーチャー、ツアーガイド

出身は南ドイツですが, 10年程ベルリンに住んでいます。ツアーガイドとしても働いています。ベルリンというダイナミックな街で生活していると、新しい発見が尽きません。

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