• 2016.12.13
  • 寒い季節も自然を満喫
気温が低くなってきました。間もなく冬がやって来ます。この時期は過ぎ去ったばかりの季節を振り返るのにちょうどいいですね。秋というとどんなことが心に浮かびますか。日本にいた頃は、この豊かな季節がどんなものなのか、はっきりとイメージできていました。スポーツ、芸術、文化、読書、紅葉狩りなどにぴったりの季節です。では、オランダの秋というとどんなことが思い浮かべますか。日本の秋と比べると暖かくはないのですが、今年はいわゆる「nazomer」(小春日和)を楽しめましたし、9月と10月の気温は20度を超えたときもありました。こうした暖かい気温のために、紅葉は完全に色づくところまでいっていません。だからといって、街を離れて森を散歩し、この美しい季節を満喫するという、秋に一番やりたいことをオランダ人が差し控えることはありません。

そんなわけで私は今年、オランダ南部のストレイベークとベルギー北部のカルムトハウトにある湿地帯を訪れました。この2つの地域には豊かな森と土壌があり、「heide」(ヒース)と呼ばれる低木がところどころに生えた草原が一面に広がっていて、自然愛好家にとても人気があります。秋になると、この小さな葉を持つ低木が花を咲かせ、草原のあちこちが濃淡の紫色に染まります。背景の針葉樹の暗い灰色と見事なコントラストを形成して、風光明媚です。この南部の森は、かつては農場経営者が所有していましたが、1930年代から地方自治体によって徐々に整備され、最終的に現在目にする景観へと修復されました。

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しかし、このオランダ―フランドル地方の森にはヒースの草原しか見どころがないというわけではありません。ストレイベークとカルムトハウトの湿地帯を散策すると、たくさんの動植物を見つけたり、そういった動植物の営みに気づかされたりします。鮮やかな黄色に色づいた樺の木に囲まれたストレイベークの湿地では、長いしっぽを持つ羊の群れや、長い毛と角を持つ堂々とした姿の「ハイランド牛」の群れに遭遇しました。これらの草食動物は、湿地帯の草が繁殖しすぎるのを防ぎ、自然の法則に従って生態系を維持するうえで不可欠な役割を果たしていると今なお考えられています。

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道に沿ってさらに森の奥へと歩いていたら、突然、大好きなブラックベリーのことを思い出しました。ブラックベリーは小さな食用の果実で、子供の頃によく摘んだものでした。このちょっとすっぱい果実が十分に熟して食べ頃になると、ジャムに最適です。鍋に入れて低温で煮詰めるだけで、簡単に作れます。それから、日本の栗拾いの習慣と同じように、オランダの子供たちも(そして大人も)森にハイキングに行くと栗拾いをします。森で拾う栗も種類によって食べられるものがあるのです。また、ブナやオークの実と葉も拾います。

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こういった色鮮やかな収穫物は、インテリア飾りやハーバリウム(植物標本)など、さまざまな用途に利用されます。こういったことを考えていたら、オランダの秋から冬にかけてのもうひとつの典型的な時間の過ごし方に思い至りました。家でのんびり過ごすということです。オランダでは、天候がよいときにはできる限り外で過ごすことに価値を置く傾向がありますが、気温が下がってくると、室内での活動に重点を置くようになります。つまり、この辺りで目にする多くの花屋やインテリアショップに並んでいるインテリア飾りにも、より多くの時間やお金が費やされることになるはずです。きっと、私が日本で感じていた「秋」に対するイメージとオランダの秋のイメージは、それほどかけ離れたものではなかったのでしょう。ハイキング日和が過ぎたら、家で過ごすのが一番です。読書をしたり、絵を描いたり、暑い夏にはできないあらゆることに時間を費やせばいいのです。

特派員

  • リサンネ・ クライナン
  • 職業通訳、翻訳業

私はオランダの港町であるロッテルダムの郊外に住んでいます。日本語、日本文化や芸術の勉強のために2年間日本へ留学しました。そこで、国境や文化を越える様々な表現方法から生まれた人と人、人と場所の繋がりに感動しました。日本で経験したこと、感じたことを振り返り、新鮮な視点からオランダでの日常を見るようになりました。

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