• 2017.02.14
  • 寒い日に負けない甘いもの
新年が明けて、世界各国の友人と新年の挨拶を交換するのは毎年楽しいのですが、それよりもっと楽しいのは、お正月時期の異文化の習慣についての話でしょう。原点も意識せず、ずっと慣れていた母国独特の習慣を再発見するのは最も興味深いと思います。
「日本では御正月にお雑煮を食べますが、オランダもそういう習慣があるでしょうか。」と聞かれたことがあります。最初、少し質素であるオランダの食文化はお節料理のような伝統的で意味深い御正月ならではの料理がないと考えていました。しかし、ある日、町を散策し、商店街の前のいつもの甘い香りがする豪華な車を見たら、忘れていたオランダ独特の御正月食文化を思い出しました。

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それは、オランダの「Gebakkraamへバッククラーム」(お菓子車)です。11月、寒い季節にもなると、オランダの都会から地方の町にいたるまで、鮮やかな色や華やかな装飾がある移動販売の車が見られるようになります。冬の寒い風で流れ込む甘い香りに誘惑される人がこの車の前に多く並んでいます。この菓子車ではさまざまなお菓子を売っていますが、その名物は「Oliebollenオーリボレン」(直訳:油玉)という「サーターアンダギー」に少し似ている丸くて甘い揚げパンです。粉砂糖がまぶしてあったり、ドライフルーツが入っていたり様々な種類があります。また、菓子車ではオーリボレンだけではなく、りんごが入っている「Appelbeignet アッペルバイネー」(アップルパイ)や「Berlijnse Bolベルラインセ・ボル」(ベルリンの玉)というクリームかジャムが入っている揚げパンも売っています。具が入っているパンも美味しいですが、やはりオーリボレンは御正月ならではのお菓子として最も人気を集めています。毎年、あるオランダの新聞社がオーリボレンコンテストを開催し、その結果は全国から注目されます。そして、大晦日に最も美味しいオーリボレンが食べられるように、31日の朝早く起きてコンテストの「第一位」になったお店で並んでいる人が大勢いました。

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オランダの一番美味しいオーリボレンを食べたくて、こうして並んでいる人たちの姿や「最高のオーリボレンのために100時間以上訓練する」という新聞記事を見たら、やはりオランダでこういう甘い食文化が大切に思われていると考えるようになりました。「では、どうして冬にだけ売っているのか?」と聞かれたことがあるのですが、その答えがピンとこなかったです。なぜオランダのオーリボレンは冬限定食品なのか、その文化的な背景が何だったのかといったことについて考えたこともなかったからです。オーリボレンの歴史について検索してみたら、様々な理論が出てきました。例えば、ある伝説によると、中世のオランダ人はキリスト教の断食期間が終わってから、体重を増やすために油っぽいクッキーを食べる習慣があり、それがオーリボレンの原点だったそうです。現在でも、体が弱くなる寒い冬には、オーリボレンなどの温かく甘いものは私たちを元気にしてくれるでしょう。また、他の話によるとオーリボレンはそもそもポルトガルのもので、15世紀ユダヤ教徒がオランダに持ってきたお菓子だそうです。それより古く、少し不思議な伝説によると、オーリボレンはもともとオランダに暮らしていたゲルマン民族のお菓子で、ゲルマンの年末に悪魔に腹を切られることに脅えて、それを防ぐようにオーリボレンのような油っぽいものを食べて、腹を強くしたかったそうです。

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この物語の中でどれが本当なのかは分かりませんが、オーリボレンの原点がはっきりされていなくても、現在のオランダでオーリボレンが大人気であることに違いなく、冬には欠かせないお菓子だと言えるでしょう。そして、オーリボレンに欠かせないものと言えば、やはり温かい飲み物です。特に、ホイップクリームがたっぷりかかっているチョコレートミルクは冬の癒し物として大人気があります。オーリボレンと同じように、このオランダ風のチョコレートミルクも歴史が長いそうです。「バンホーテン」というブランド名をご存知でしょうか。1828年にオランダ人のクンラート・バンホーテンさんが、ココアバターから作られた現在のチョコレートミルクを発明して、そのおかげで私たちはチョコレートミルクを楽しむことができていると言われています。その甘い味は美味しいだけではなく、頭を活発にするなどの良い効果もあると言う(言いたい!)人も少なくないです。体を強くすると言われているオーリボレンと一緒に飲んだら、今年もきっと良い年になるでしょう。

寒さが厳しい日々が続きますが、ゆっくり過ごして、おやつにオランダのオーリボレンや暖かい飲み物を楽しんでみませんか。



特派員

  • リサンネ・ クライナン
  • 職業通訳、翻訳業

私はオランダの港町であるロッテルダムの郊外に住んでいます。日本語、日本文化や芸術の勉強のために2年間日本へ留学しました。そこで、国境や文化を越える様々な表現方法から生まれた人と人、人と場所の繋がりに感動しました。日本で経験したこと、感じたことを振り返り、新鮮な視点からオランダでの日常を見るようになりました。

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