• 2018.03.29
  • セボルガ、独立の日を目指して
われらがリグーリア地方のインぺリア県にある自称独立国セボルガで、「クーデター」が起こっています。
セボルガはリグーリア州の西海岸にある小さな町で、フランスとの国境からも遠くありません。ここを「統治(実際には運営)」している自称「大公」のマルチェッロは、数年越しの闘争も空しく、イタリアからの正式な独立をいまだ果たせていません。
セボルガ「公国」の入り口には衛兵が立ってはいるものの、誰でも出入り自由です。

セルボガはボルディゲーラとサンレモの中間にある中世都市で、住民は約300人。独自の「大公」や王政議会、数名の衛兵、民間資金を有する村落ですが、イタリア政府は明白に非公認の立場を表明しています。


中世都市の中心地、セボルガ


セボルガの中央広場

最近、2009年に死去したジョルジョ1世の後継者で、2010年からこの公国の長を務めているマルチェッロ「大公」を退位させる動きが表面化しています。

マルチェッロ1世は、民主的な選挙によって人々に選ばれた人物です。クーデターを図った「自称・大公」はニコラス1世と名乗るフランス人で、公式ウェブサイトでは自分こそが真の殿下であると宣言しています。
村のウェブサイトには、国の大臣や長官の名も連なっています。ニコラス1世は、公国の独立を勝ち取るために自ら戦い、人々に繁栄をもたらすべく尽力するとフランス語で話している動画まで公開しました。
言ってみればモナコ公国と同様のことが、イタリアという国で起こったわけです。しかしマルチェッロ1世はこのようなことは断じて容認できないと表明し、この発表に対する大公と王政議会の驚きと遺憾の念を文書で表しました。
セボルギーニ(セボルガの住民の呼称)に対し、今こそ自国の旗を守ろうとの働きかけが強まっています。
非公認の公国とは言え、彼らは独自の旗や国歌、多数の衛兵、そしてなんと通貨も持っています。法的価値は持たないルイジーノという通貨は固定値で6米ドルに相当し、この町では支払いに使えます。
町のウェブサイト(公式の中でもクーデターに関連しないページ)を見れば、非公認公国としての価値観や理念などがていねいに説明されているし、大公夫妻の他国での会談の写真やニュース記事も見ることができます。
セボルガが独立を主張してきたそもそもの根拠は、ヴェンティミリアのギド伯爵がベネディクト会の修道院に領地を寄進した954年まで遡ります。この土地は、18世紀末にサヴォア家のヴィットーリオ・アメデーオ2世が購入した後、一方的かつ非合法な経緯でイタリア王国に併合されました。それから今日に至るまで、ここは事実上イタリアの領土であり、住民たちは不本意ながらもイタリア政府に納税せざるを得ない状況がつづいているのです。 公国が独立を叫んでいるのも、観光客や投資家の関心を引きたいがためのあざとい宣伝活動に過ぎないと考える人は少なくありません。石造りの街並みにこぢんまりとした広場、狭い路地など、タイムスリップしているかのような気分になれるセボルガの町は、イタリアにたくさん存在する中世の面影が残っている小さな村落と同じ雰囲気をたたえています。


典型的なセボルガの石造りの家々

イタリア旅行協会のオレンジフラッグに輝くなど、セボルガの町の魅力は実証済み。観光の優良ブランドとして名高いこの賞は、イタリア内陸地域において際立ったホスピタリティを持つ小都市に対して授与されるものです。
可愛らしい石造りの家、小さな通りと小さな広場がチャーミングなセボルガは、町の紋章を象った切手まで発行しています。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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