年末年始営業のご案内
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※各店舗の年末年始の営業についてはフロアガイドよりご覧下さい。

  • 2018.05.08
  • 二つの愛称を持つ町、アラッシオのお話
私の住む美しい地方には、とある「壁」があることで全国的に有名な、小さなビーチリゾートの町があります。アラッシオのMuretto(「小さな壁」を意味するイタリア語)は、リグーリア地方のこの町の比類なきシンボル。二つあるこの町の愛称の一つが「小さな壁の町」です。Muretto は2ブロック分ほどの長さがある石造りの壁で、イタリアをはじめ世界各国の文化・スポーツ・エンターテイメント界の有名人たちのサインが刻まれたカラフルなタイルが一面に飾られています。彼らがこの町を訪れ、敬意を表した軌跡が文字通り町の名所となっていて、さながらハリウッドの有名なウォーク・オブ・フェイムのイタリア版といったところです。
最近、この壁の保護と保存という名目で、Murettoへのタイル取付けに関するルールが設けられました。タイルに名前を載せる権利の申請や、許可・承認を得るための手順などがきちんと確立したのです。
新しいタイルを入れたい場合、Muretto全体のイメージを高め、プラスの効果を与えるようなものでなければいけません。これについては、財団のメンバーからなる委員会と地方自治体の代表による承認が必要です。
また、タイルは委員会の「様式に関する」要請に沿っていなければならず、これにそぐわなければ却下される場合もあるとか。
1940年代の終わり頃、この町にやって来る大勢の有名人たちを見て、公立の公園の周囲の壁に飾りを施すことを思い付いた近所のカフェの経営者は、市役所にこの案を持ち込みました。彼のアイディアはすぐさま市議会を通過します。さらに、彼の経営するカフェの常連で、足繁くこの町を訪れていたアメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイの財政支援も受けられることになりました。
アラッシオの行政から特段の承認を得ないまま、地元の陶芸家が製作したタイルにイタリアの歌手数人のサインを入れた最初の3枚がほとんど内密に飾られたのは、1950年代の初頭のことでした。
壁にタイルが貼られてからも行政による処分や撤去命令などはなかったので、タイルの作り手たちは次々に作品を生み出していきました。カフェを訪れたキラ星のような顧客たちのサインが刻まれた色とりどりのタイルは日を追うごとに増え、美しい壁の人気は高まるばかり。まもなく、映画・テレビ・ファッション・エンターテイメント・スポーツなど、この町を訪れた各界の大物たちが自分の名前を入れたがるようになり、壁のタイルは今や1000枚近くまで増えたのです。 壁の上のブロンズ像「Lovers(恋人たち)」は、彫刻家エロス・ペリーニの作品で、あとからここに設置されたものです。アラッシオがイタリアで唯一、Citta degli Innamoratiすなわち「恋人たちの街」と呼ばれるようになったことを誇るのは、この像があるからです。
西暦1000年よりも数世紀ほど昔の、古い伝説があります。神聖ローマ帝国の皇帝となったザクセンのオットー1世の娘アデラシアが、一人の若者を好きになりました。彼が高貴な生まれではないという理由で、父親は娘の恋に難色を示しますが、幾多の波乱を経たのち、二人はなんとか夫婦となって遁走します。アデラシアと青年が住み着いた土地に街が興り、親愛なる王女の呼び名「アラクシア」、のちの「アラッシオ」という名前になったというわけです。
現在、壁の上には赤い郵便箱が設置してあります。この郵便箱を使って、毎年ベストラブレター賞を決定するコンクールが行われているのです。
郵便箱の発案者は、父親がコーヒーハウス「カフェ・ローマ」を経営していた、ある地元の画家。「カフェ・ローマ」は著名人の社交場で、ここで出会って恋に落ちていく若者の姿も多く見られました。恋人たちは去り際に、カフェの壁を使って愛のメッセージを残していったのだといいます。
彼は、すべてのメモや手紙を集めるための郵便箱を置けばいいと閃きました。美しい言葉の数々が寄せられたことから、コンクールの企画が立ち上がり、今では毎年、ヨーロッパ全土から集まった恋文を、権威ある審査員が審査しています。上位20選に入賞したラブレターは、聖バレンタインデーにその手紙を読み上げられるのです。


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特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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