• 2020.04.20
  • 伝統料理「スライスパニッサのサンドイッチ」
寒い冬の午後に何か軽食が欲しくなった時、リグーリア地方の人々がよく食べるのが「スライスパニッサのサンドイッチ」です。正確な名前はパニーノ・コン・パニッサ(パニッサのサンドイッチ)。パニッサはひよこ豆の粉、水、塩でつくるリグーリア独特の食べものです。つまり以前のブログでご紹介したファリナータと材料は同じですが、パニッサの場合はオリーブオイルを使いません。

フェッテ・ディ・パニッサ(パニッサのスライス)をつくるには、粉に水と塩を加え、ポレンタのようにもったりして均一になるまで加熱します。火が通ったら、大きめの銅の深鍋か三日月型に分かれた昔ながらの長方形の型に移して冷まします。温かくても冷たくしても食べられるパニッサ。冷たいほうはサイコロ状にカットしてオイル、塩コショウ、生のタマネギで味付けをし、サラダ感覚で食べます。しかし何といってもダントツにおいしいのは、パニッサのスライスを熱々の油で揚げ、昔ながらの白パンのフガッサ(フォカッチャ)に挟む食べ方。パニッサはリグーリア地方のストリートフード、つまり屋台の食べものなのです。


パニッサ

パニッサのスライスを挟んだサンドイッチは、リグーリア地方になくてはならない食べもの。誇り高いリグーリアっ子なら例外なく、人生で一度(それよりずっと多いことを願います!)はこのサンドイッチを食べているはずです。
スライスのサンドイッチを食べるべき名所と言えば、サヴォーナ市のファリナータで有名なピア通りの脇道の狭いヴィーコ(路地)にある小さなお店。ほんの数年前までは店名があるかどうかも定かではありませんでしたが、その後、カーサ・デッラ・パニッサ(パニッサの家)と書かれた店の名刺が登場しました。しかし、この店に関してはずっと、名前など大して重要ではありません。サヴォーナでは誰でもここを知っているし、ピア通りとの四つ角にはお店への行き方を示した親切なサインもあるので、サヴォーナ市に行けばこの店はすぐに見つかります。さらに、ピア通りからショップ近くの路地に白い椅子が出ているのが見えたら、お店がオープンしているという合図です。
一見地味で狭くるしい感じの小さなレストランですが、創業以来誰もが知っていますし、サヴォーナ市では紛れもない名所です。ずっとお店を切り盛りしていた2人の女性のうち、1人は2013年の11月初めに亡くなりました。今ではその2人の「歴史的婦人」の残りの1人と男性1人が経営し、注文を受けるとお客さんの目の前でパニッサのスライスを揚げています。

店はたいへん小さいながら、非常に特徴的。入口に大きな古いフライヤーが1台、カウンターが1つ、長くスライスしたパニッサを寝かせて乾燥させる備品が2つ、イートイン用のテーブルとベンチが1台ずつ(どうしても揚げ物の匂いが服に付くリスクは避けられませんが)。これらの備品はおそらく創業以来ずっと使っているもので、サヴォーナの方言で手書きした価格表が壁に掛かっています。
ここの料理はお店で食べるか、新聞紙に包んでテイクアウトするかを選べます。
メニューにはほかに、タラやルリジサに衣をつけてその場で揚げ、大ぶりなフライにしたフリシェウと呼ばれる伝統料理があります。
メニューはこれだけですが、とにかくおいしい!
リグーリア地方のフリシェウの具材は、レタスやシラス、アンチョビーなどが伝統的。チャイブやオレガノ風味なんていうのもあります。
謝肉祭、復活祭といった年中行事の時期になると、粉砂糖やキャラメル、ハチミツ、スプリンクル(お菓子に使われるトッピング)などを使った甘いフリシェウも登場します。それらはたいてい、地域のイベントや季節の露店で買うことができます。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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