• 2020.05.27
  • アートは休止しない
多くの文化系ウェブサイトやTV局では、この強制的自宅隔離の間に誰でも視聴できる地域ストリーミングを開始しました。無料で見られる動画や映画、ドキュメンタリーなどを配信する長期番組編成が行われたのです。
アートや文化のパワーで視聴者たちとつながろうと、イタリアの芸術家や詩人、文化人、作家などが毎日自宅からミニライブ、朗読、レッスンなどを生中継するオンラインのフェスティバルも開催されています。

さらに詩や本の朗読、お薦めの本の紹介、厳選した文学運動の解説を文筆業の人々が自宅から配信する、デジタル文芸祭のような文化的空間のストリーミング企画を国営放送RAI(イタリア放送協会)のTV局が呼びかけたところ、多くの作家がこれに応じました。
ダウンロードして塗り絵ができるモノクロの図版を集めたMilano Artのデジタルプラットフォームには、なんと募集から24時間もしないうちに数百名のアーティストの作品が寄せられたとか!
このバーチャルなアルバムは大人のための塗り絵帳で、家にいながら誰でもスマホやタブレットでダウンロードするか普通のA4用紙に印刷して、色を塗って遊ぼうというもの。プラットフォームとなっているMilano Art Guideのウェブサイトに定期的にアップされるイラスト集で、毎日更新されていく塗り絵帳なのです。
やってみた人々からはリラクゼーション効果が抜群との評判で、塗り絵は新種のヨガと言えるかもしれません。
イラストはあらゆるデバイスでダウンロードが可能で、印刷することができます。色を塗り、アーティストの名前をタグ付けしてSNSで共有することもできます。
ビジュアルアートを盛り上げながら学生や一般の人々に情報と娯楽を提供するため、多数の私立財団、公営の博物館、そして文化財・文化活動省による大きな有名美術館や小さな私設ギャラリーのバーチャルツアーも発信されています。
イタリアの文化財の使用・活性化構想を立ち上げた文化財・文化活動大臣がステイホームのプロモーションを仕掛けた時は、その呼びかけに多くの博物館や美術館が熱い反応を示しました。それぞれの美術館や城、公園も、ウェブサイトやSNSに載せるコンテンツ画像を増量しています。なかには単純なテクニック(画像、短い動画、映像素材)を用いた展示室のバーチャルツアーを公開しているところや、エピソードを盛り込んで視聴者を惹き付けるようなショートフィルムを製作しているところも。カノザの考古学博物館、コペルティーノ城をはじめ、特に考古学的特色が強い博物館に加え、フィレンツェのウフィツィやローマのバチカン美術館のような特に著名なイタリアの美術館まで、バーチャルツアーを提供しているんですよ。
バチカン美術館のウェブサイトでは、遠く離れた場所にいても楽しめる素晴らしいオンライン・ウォークを公開中。見事なシスティーナ礼拝堂やラファエロの間を含めた1000点もの美術作品が、時空の制限を超えて目の前に現れます。
公開インタラクション、VRを使った3Dバーチャルツアーなども多く見られるようになりました。

#artyoureadyのハッシュタグを使ったインスタグラムの大規模なデジタルイベントも、文化財・文化活動・観光省によるプロモーションのひとつです。インフルエンサーはもちろん、プロもアマチュアも含めた写真家や全世代の閲覧者を対象に、イタリアの美術館や考古学公園、図書館、記録保管庫などで撮った、来場者の姿が写っていないお気に入りの写真を投稿しようというキャンペーンです。
「写真のフラッシュモブ」と呼べそうなこの企画は結果的に、素敵な写真を公開し、イタリアの文化遺産の美しさやユニークさを集約、共有して全世界に発信しています。そしてこのキャンペーンは、閉鎖され、非公開状態であっても、文化遺産は私たちのアイデンティティの脈打つ心臓として生き続けていることを思い出させてくれるのです。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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