• 2022.05.26
  • バラエティ豊かなグランピング体験
イタリア人は、キャンプが好きではありません。
これは本当の話で、イタリアの人(の大部分)がこよなく愛するものといえば快適さとおいしい食べもの(キャンプファイヤーよりもお手間いり)であり、休暇を利用した冒険には興味がないせいだと私は思っています。そんなイタリアで人気となりつつあるのが、快適なホテルに泊まるというスタイルを失うことなく、キャンプ体験と自然との触れ合いを楽しむことができるグランピングです。
ホテルの居心地の良さにキャンプとアウトドア体験の素朴な楽しさ、星空の下で眠るという夢のような体験、屋根を打つ雨音を聴きながら安らぐ時間、安全さと快適さのすべてがかなえられるのがグランピングの魅力です。
従来のキャンプよりも快適で贅沢な建物に泊まってキャンプをすることが可能になったというわけです。あらゆるニーズに応えるグランピングは、快適で贅沢な生活に慣れてしまったけれど、自然との触れ合いや自然の中で過ごす利点を再発見したいという人にもぴったりです。
リグーリア地方でもいくつかグランピング用の施設が開業していますが、数ヶ月前から予約しないと「部屋」が確保できないほどの人気ぶり。
グランピング人気には多くの要因が考えられますが、個人的にはパンデミックの影響が最も大きかったと思っています。
何と言ってもまず、自然との触れ合いを求める人々の欲求が高まったこと。グランピングはこの欲求をかなえてくれます。
2点目は、多くの場合、グランピングはホテルに泊まるよりも安価だという点。
そして3つ目に挙げたいのが、独立した空間なので人との安全な距離を確保しながら滞在することができるという点です。こうしたグランピング施設に泊まると、大自然の懐に抱かれて朝の目覚めを迎えた瞬間から、360度どこを見ても自然ばかりという状態で過ごすことができます。
リグーリアには、モンゴルの伝統的な移動式住居のゲルやツリーハウス、ジオデシックドームなど、さまざまなタイプのグランピング施設が揃っています。この夏、ジェノヴァ近郊の山のほとりにティピー(ネイティヴアメリカンの移動式住居)を使った宿泊施設まで登場するそうなので、選択肢の幅はさらに広がりますね。


ジオドームの内部

グランピング施設は、周囲の環境を活かし、環境に配慮した旅行やサステナブル・ツーリズムにフィットするよう作られたものがほとんど。昨今はこの点が重要なポイントですから、人気が高まっているのもうなずけますね。
旅の楽しみ方も変わってきました。私たちは自分の思いのままに探索し、その土地の文化に浸りたいと思っています。自然を「見学」するだけではなく、自然の中で生きてみたいと考えるようになってきたのです。おそらく、人々は以前ほど遠出をしなくなり、休暇に使う費用も少なくなっているでしょう。そんな私たちにとって、家からさほど遠くまで行かずに、あらゆる些事から解放されて週末のひとときを過ごせるグランピングは理想の形なのかもしれません。
私は、ジオドームでロマンチックな週末を楽しみました。
ジオドームは梁を何本もめぐらせ、遮光性のある薄いビニールフィルムで覆った半球型の建物です。
この建物の特徴は、室内を暖めることが可能な構造にあります。テントやゲルでは室温を調整するには適切な冷暖房システムが必要ですが、ジオドームでは特徴的な構造によって、夏でも冬でも快適な室温に保つことができる微気候が内部に作られるのです。
さらには強風や霜、雪に対する耐久性も非常に高いという優れもの。まるで星空の下で眠りに着いているような気分なのに、身体を横たえるのは気持ちの良いベッドの上、さらにはテントでは望めないスカイビューも楽しめる、という最高の体験でした。
リグーリア地方のグランピング施設では、さらなるお楽しみが用意されていて、例えば、オリーブの木々に囲まれて眠り、翌日はオリーブの実の収穫を体験する、というプランもあります。
ハイキングコースでもあり、いにしえのローマ人の暮らしの名残をとどめる旧ローマ街道のフランチジェナ街道の近くにも、グランピング施設があるそうですよ。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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