パネットーネの伝統的なレシピで使う材料は、そんなに多くありません。しかし、準備に時間はかかるし、焼き上げるまでには複雑な工程が必要です。
いったんふくらんで上部が例のドーム型になったら、パネットーネのドームが「倒壊」しないよう、上下ひっくり返して冷まさなければなりません。
自宅でパネットーネ作りに挑戦する人もいますが、近所のペストリーショップやお菓子屋さんで売っている、プロの職人が作ったパネットーネのように仕上がることはめったにないでしょう。
ひと口にパネットーネと言っても、よくあるスーパーマーケットで売られているような5ユーロ程度のものから、洋ナシ&チョコレート味や、ラム&オレンジリキュール味などの、職人が手がける45ユーロの高品質なものまで、値段は様々です。
昔ながらのパネットーネの材料は、小麦粉と水、天然酵母(水と小麦粉から作るサワー種)、砂糖、バター、卵、そしてシロップ漬けの果物とレーズンです。
17世紀の初頭に誕生したと言われるパネットーネは、19世紀の終盤あたりには新年の繁栄のシンボルとしてクリスマスシーズンの主食になりました。
ミラノと他の都市、少なくともイタリア北部の街との間に交流があったおかげで、19世紀末にはイタリアのほぼ全域でパネットーネの存在が知られるようになり、人気を集めました。さらに19世紀の終わりから20世紀の始め頃には、ミラノにある有名ペストリーショップが国内だけでなくイタリア系移民が数多く暮らすアルゼンチンや米国などに向けてパネットーネの配送を開始したのでした。
工業化によりパネットーネが大量に流通するようになると、新鮮な材料ではなく調理済みの生地を使うことによって味の均一化も進みました。
現在、パネットーネは特定のレシピで焼き上げる製品として保護されていて、バターや新鮮な卵など使用する材料も規定されていますが、工場で生産される製品には乳化剤や保存料も使う必要があります。
工場の製品と職人が作るパネットーネの違いはズバリ、これらの添加物を含むか否かという点で、作り方にはさほどの違いはありません。職人が店舗で作る場合はかなりの短期間で仕込みを行いますが、大きな企業だと11月から12月にかけてスーパーマーケットに大規模に供給できるよう、夏にはもう作り始めるのです。ですから、工場で生産されるパネットーネは、数か月も痛むことなくふっくらとした状態を保たなければなりません。だからと言って工業化されたパネトーネが美味しくない、という訳ではありません。美味しさは、バターやその他の材料の質によっても変わりますからね。
いずれにせよ、ここ数十年は職人が作るパネットーネの生産が増えています。そんな流れもあって、今やジェノヴァでも、ほとんどのペストリーショップやカフェでオリジナルのパネットーネを販売しています。
また、種類や味も増えていて、チョコレートチップやマロングラッセ、砂糖漬けのオレンジピール、シャンパン、ピスタチオ、リモンチェッロなどのフレーバーも登場しています。
パネットーネはそのパッケージも重要で、缶や丈夫な紙箱にも美しい装飾が施されています。きれいな缶なら家具の上に飾ったり、おもちゃや雑貨類、キッチン道具などをしまう箱として使ったりできますよね。
大部分がピエモンテ州の近くで製造される、中甘口で白のスパークリングワイン、モスカートと一緒にデザートとして出てくることが多いのもこのパンの特徴です。
昔からリグーリアに住んでいる人たちは、スライスしたパネットーネをミルクとコーヒーで作った温かいカフェラテに浸しながら食べるのが最高だと口々に話しています。
冷ますために吊された、ペストリーショップのパネットーネ