• 2023.06.23
  • リグーリア地方の気候と3種類の霧のお話
私たちが住む地域は地中海性気候なのですが、リグーリアは東西に細長く広がる州で、山が海岸近くまで迫っているため、場所によって気候が大きく変わります。最高気温と最低気温の差は年間を通じて緩やかですし、海岸沿いは冬でも温暖で雨も少なめです。冬期でも摂氏5度を下回ることはほとんどありません。
北からジェノヴァ周辺に向けて吹く風はトラモンターナ(tramontana)と呼ばれ、街をとりまく山々に雨や雪を降らせます。
夏場は湿度が上がって蒸し暑くなることもありますが、気温はだいたい穏やかです。
日中でも30度を超えることはシーズンの間にわずか数回程度ですが、湿度が高いので気温以上に暑く感じられます。
海岸沿いでは、トラモンターナが一陣のそよ風となり、暑い空気を冷やしてくれることもあります。
内陸部の気温はより過酷ですが、長い期間に亘って大雪が降り続くことはまずありません。ここ数十年は特にそうで、気候変動の波はここリグーリア州にも確実に影響を及ぼしています。結果として、かつて冬には地元のスキーヤーたちで賑わっていたモンテ・ベイグアの人気スキーリゾートが、永久閉鎖の憂き目に遭ってしまいました。

地中海沿岸では霧はあまり多くなく、どちらかと言えば珍しい現象ではありますが、リグーリア地方でも発生することがあります。
この霧に不慣れなのがリグーリアっ子。霧などめったに出ないので、出くわしてしまったらどうしていいか分からないのです。霧が発生すると、漁師たちは船のサイレンを鳴らしながら一晩中お互いの位置を確認しあい、路地にいる人々はどこに行けばいいのか分からずに途方にくれる…という感じ。
霧の呼び方にも「マカイア(macaia)」、「カリゴ(caligo)」、「ガイゴ(gaigo)」という3種類があり、どれを使えばいいのか分からないほど。

マカイアという用語はギリシア語にルーツがあるらしく、もとはカリゴと同じものでしたが、時を経るにしたがって、よりネガティブで物憂げなニュアンスを持つようになりました。この地の文化や文学の一部にもなっていて、リグーリア人の不満(mugugno)を凝縮した言葉、あるいは象徴した言葉として、詩人やソングライターも作品の中で語っているほど。
いつでもあらゆるものに文句をつけまくることで全国的に有名なリグーリア地方の不平不満の「芸術」について、私も記事を1本書いたことがあるんですよ。

科学的な観点からマカイアとカリゴを区別するなら、一般的に朝に出る霧がカリゴ、夕方以降に発生する霧がマカイアです。マカイアは暑い季節により多く見られ、カリゴは春先のまだ寒い時期に出現するかなり珍しい霧です。
カリゴは通常春に出る霧で、かなり強めの高気圧と冷たい海、水面スレスレのところに吹く、海岸に向かって霧を押し流す弱い南風など、きわめて特殊な条件が揃ったときに発生します。
その結果、数メートルの高さがある乳白色の霧の堤防が現れます。高台から海を見下ろすと、眼下に広がる見事な雲海を見ることができるとか。


カリゴ現象


マカイア現象とジェノヴァの旗

一方、ガイゴはアペニン山脈の中西部で西から東にかけて立ち込めるテーブルクロス状の霧です。マカイアやカリゴとは対照的に、北風と湿度によって発生する、スタウ(stau、アペニンの丘沿いに凝縮する湿気を多く含んだ気流)と呼ばれる効果によって、リグーリアの斜面にテーブルクロスをかけたような雲が現れる現象です。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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