3つの名物料理とは、濃厚な前菜のテスタローリ(testaroli)、かつては貧しい人向けの料理だったものが今では多くの地元レストランの定番メニューとなっているガッタフィン(gattafin)、そしてボリューム満点のメイン料理バダルッコ(Badalucco)風タラ料理です。
円形のガッタフィン
テスタローリは、定義づけするのが難しい食べ物です。古代のパン種を使わないパンという説もあれば、パスタの先駆けという説もあり、フランスのクレープに例えられることもあります。しかし、どれもテスタローリが実際にどのような味がするのかを説明するものではありません。テスタローリは、小麦粉と水と塩の3つのシンプルな材料で作ります。これらを混ぜ合わせて生地を作り、テスト(testo)と呼ばれる円形の鋳鉄製容器に広げて残り火の上に置き、同様に温めた別のテストで蓋をして焼きます。気孔の多い、柔らかい円形の生地が焼きあがったら、ひと口大に切って沸騰した湯に30秒浸します。味付けには伝統的なバジルペストを使うのが定番です。
昔は、テストはテラコッタ(レンガ)で作られていたため、ラテン語でレンガを意味する「テスタ(testa)」が変化して「テスタローロ(testarolo)」になったのだとか。
テスタローリは、トスカーナ州とリグーリア州の間にあって、多様な民族や風習が混在するルニジャーナ地域の名物料理です。
前述のとおり、今ではバジルペストを使うのが定番ですが、元々はエクストラバージン・オリーブオイル、ペコリーノあるいはパルメザンチーズ、それにごく細かくみじん切りしたバジルのみで味付けされていました。
テスタローリ
三角形のガッタフィン
ふたつめの絶品は、ガッタフィンです。
リグーリア料理のレシピの多くは、主婦たちが季節や自然、それに地元の交易がもたらした品を調理していた時代に生まれたものです。
香り高く繊細でフルーティな味わいのエクストラバージン・オリーブオイルを使うものの、ガッタフィンは脂質が低く、繊維と植物性たんぱく質が豊富で、香り豊かなハーブで風味付けすることが不可欠ですが、中でもマジョラムの香りが際立っています。
名前の由来にはふたつの説があります。ひとつは、2層のシュー生地にフィリングを詰めてオーブンで焼き上げて作る料理の総称「ガッタフーラ(gattafura)」に由来するという説、もうひとつは「ガッタ(Gatta)」という村の石切り場で働く労働者が夕方にハーブを持ち帰り、妻がそれを使って調理したという説です。
ガッタフィンの材料は、野生のフダンソウやホウレン草などのハーブや、少量のパルメザンかペコリーノ・チーズだけ。
簡単に言えば、ラビオリ生地にハーブとチーズを詰めてオリーブオイルで揚げた料理です。
最後にご紹介するのが、干しダラのバダルッコ風。これは、バダルッコ村の郷土料理で、干しダラに松の実やクルミ、ヘーゼルナッツ、オリーブ、アマレッティ(メレンゲ菓子の一種)、そして風味の強さを和らげてくれるドライフルーツなどを加えて煮込んだものです。
この辺りは北ヨーロッパの人々と交流があり、どちらも乾燥した地域だったため干し魚(タラ)が取引されていたので、中世時代からよく知られていました。
何世紀もの間、タラといえばジェノヴァの主要な港の近くの店で見かける一風変わった食材のひとつという認識でしたが、18世紀になると最も頻繁に食卓に登場する魚となりました。
タラが大量消費されるようになったのは、保存技術が進歩したことはもちろんですが、様々な方法で調理できることも大きな要因です。
バダルッコ村の住民がサラセン人の長期の包囲攻撃に最後まで抵抗でき、さらに海上で侵略者たちを撃退するという歴史的な一幕を成し遂げられたのも、この干しダラのストックがあったからだという言い伝えもあります。
この歴史ある村では、9月の第3日曜日に開催される干し魚祭りで、この出来事が再現されています。
今回紹介した3つの名物料理は季節の逸品として楽しまれていて、リグーリア州のレストランでは秋に提供されることが多いです。