イタリアの人々が厳しく守っている暗黙のルールには、食事や料理にまつわるものが多く見られます。これらは、イタリア人が熱く議論する二大トピックでもあります。
海外からの観光客や外国人居住者の目には、これらのルールが不可解に映ることもあります。しかし、イタリア人は、その理由も明確に説明できないまま、これらの不文律を忠実に守り続けています。
1.第一のルールは、カプチーノは朝食時に飲むものだということです。イタリア人が朝食時以外、特にお昼を過ぎてからカプチーノを注文することは滅多にありません。カプチーノはイタリア式の甘い朝食に最適な飲み物とされており、ディナーの後にカプチーノを注文する人を見かけたら、イタリア人は大きなショックを受けるでしょう。
2.朝食時を除き、コーヒーを飲む際に椅子に座る必要はありません。休憩時間や昼食後、あるいは午後のひとときに、イタリア人はカフェに立ち寄り、カウンターでコーヒーを注文します。もちろん、注文するのはエスプレッソです。エスプレッソを飲み干し、バリスタと軽く言葉を交わすのは5分もあれば十分なので、立ったままでも構わないのです。
3.イタリア人は昔から(そして今も)かなり迷信深い国民です。「おばあちゃんの知恵袋」的なものが若者へ及ぼす影響力は徐々に弱まっていますが、誰もが守っている迷信が一つあります。それは「誕生日を祝う言葉を誕生日より前に伝えてはならない」という掟で、縁起が悪いとされています。
4.イタリア人の食べ物への執着は強く、食へのこだわりは世代を超えて受け継がれ、文化的特性となっています。そのため、料理は母親や祖母が愛情を示す方法の一つなのです。料理に関して、母親の意見には多少反論できるかも知れませんが、祖母に異議を唱えることなど絶対にできません。祖母に食べ物を勧められたら、たとえ満腹であっても断ることはできません。祖母は「ノー」という答えを受け入れず、あらゆる手段を使って孫たちにもう一口食べさせようとするのが常です。
5.より実用的な話題になりますが、スパゲッティを折って鍋に入れることは、食事中にナイフでスパゲッティを切ったり、スプーンを使ってスパゲッティを口まで運んだりする行為と同じように「冒涜」と見なされています。スパゲッティは切らずに、作法に従ってフォークのみを使い、お皿の上で巻いて食べなければなりません。
6.イタリアで乾杯する際は、「サルーテ(salute、「健康」の意)」と唱えながら相手の目を見ます。これはイタリアに限った習慣ではなく、中世時代にまで遡る風習です。当時は乾杯の最中に目をそらすのは不正の印とされていました。
7.パスタやリゾットをはじめ、魚介類を使った料理には、すりおろしたパルメザンチーズなどのチーズをかけてはいけません。これは、パルメザンなどの強い味わいが、魚介類の繊細な風味を損なうためです。

魚を使ったパスタにパルメザンチーズをかけるのはご法度
8. 食とは関係ありませんが、イタリアに古くから伝わる(残念なことに今でも一般的な)言い伝えに「冷たい隙間風に当たると病気になる」というものがあります。特に汗をかいていたり、体が濡れていたりする時は危険だとされています。
この迷信は現在もイタリアで広く信じられていますが、現代医学では隙間風が病気を引き起こす直接の要因とはならないことが明らかにされています。
実際、隙間風に当たることと特定の症状の発現との相関関係を証明する研究結果は存在しません。したがって、これも文化的な信仰や迷信による「想像上の病気」といえます。
「隙間風」が実際に疾患を引き起こすことはありませんが、風邪やインフルエンザ、喉の痛み、くしゃみ、頭痛、筋肉痛といった様々な症状を隙間風のせいにする人たちは少なくありません。
これらの症状は隙間風ではなくウイルスや細菌が原因で起こり、冷気とも汗ばんだ時に窓を開けたこととも無関係だという点を強調することが重要です。