• 2025.10.15
  • ブログ・リグーリア ー マンパエとトマクセッレ
ジェノヴァやリグーリア州には、この土地ならではの独自の文化が数多く存在し、いつも何かしら新しい発見があってとても勉強になります。
例えば、私たちは建築家が建物に込めたメッセージや暗号に気つくことはほとんどないと言ってもいいでしょう。しかし、多少の好奇心を持ってリサーチしてみると、ジェノア港に最近完成した建物に隠されたメッセージの中で、少なくとも一つを解読することができました。ジェノヴァのメルカンツィア通り(Via della Mercanzia)を通り過ぎると、ピアッツァーレ・マンドラッチョ(Piazzale Mandraccio)を見下ろすように建つ、著名な建築家、レンゾ・ピアノ(Renzo Pian)が設計した特徴的な建物が目に入ります。(下の写真参照)


レンゾ・ピアノが設計した建物

外観に取り付けられた4つの緑色のパネルは、私には少々奇妙に思えました。ですが、その意味を聞いて納得しました。これはまさに、歴史あるジェノヴァの伝統や暮らしぶりに敬意を表したオマージュだったのです。

ジェノヴァの路地はとても薄暗いことで知られており、特に建物の一階にはほとんど光が届きません。しかし、どんな苦難にも立ち向かう能力を持ち合わせるジェノヴァ人たちは、知恵を働かせてこの不便を乗り越える独自の工夫を生み出しました。それがマンパエ(mampae)です。
ジェノヴァで使われているこの言葉の起源は、スペイン語の「mampara(マンパラ、パーティションの意)」で、さらにその「mampara」はラテン語の「manu parare(マヌ・パラーレ、手で自分を守る、の意)」に由来するとされています。ただし、この意味を正確に訳せるイタリア語は存在しません。
マンパエは、レンゾ・ピアノの建物に取り付けられているパネルと全く同じ形状ですが、かつては木枠のフレームに白いシートを貼ったシンプルなものでした。建物の間から届くわずかな光を白い布で受け止め、室内に反射させるための設備です。後に、白い布はシート状の金属製パネルに置き換えられ、鏡のように光を反射して室内を照らすようになりました。
要するに、レンゾ・ピアノは伝統だけでなく、ジェノヴァ人の精神にもオマージュを捧げたのです。このパネルは、「何の意味も持たないように見えるものが、実は深い意味を持っていることは多々ある。それに気づいた時、今まで気にも留めなかったものに感謝する気持ちが湧いてくる」という教訓を教えてくれます。
街には、昔ながらのマンパエはほんのわずかしか残されていませんが、歴史地区を歩けば目にすることができるでしょう。


伝統あるマンパエ

最近もう一つ新たに発見したのは、これまで全く聞いたことがなかった、リグーリアを代表する郷土料理です。
この料理には、敵を誘惑するために使われたという背景があります。レストランでは提供されておらず、各家庭に伝わるレシピを使って家庭内で調理されている料理です。
トマクセッレ(Tomaxelle)は、様々な具材を仔牛肉で巻いた、リグーリアを代表する料理の一つです。1800年、ジェノヴァがオーストリアに包囲された際、住民たちは美味しい肉巻きで敵を誘惑しようと考え、この絶品料理が生み出された、という歴史があります。
当初のトマクセッレは、茹でたひき肉やロースト肉の残り、チャード、卵、すりおろしたチーズなどを混ぜ合わせた具材を仔牛肉のスライスで包んだ料理でした。16世紀後半にイタリアに伝わったトマトも、この肉巻きをより一層美味しくしてくれるマッシュルームも、当初のレシピには使われていませんでした。最近になって追加された材料です。

トマクセッレの作り方
仔牛の赤身200gを沸騰したお湯で加熱した後、ひき肉にします。
そこへ煮汁でふやかしたパン粉、松の実一掴み、水で戻して搾ってからみじん切りにした乾燥マッシュルーム50gを加え、よく混ぜます。
さらに卵2個、たっぷりのすりおろしたチーズ、香り付けのパセリ、マジョラム、ナツメグ、クローブを加え、滑らかになるまでよく混ぜ合わせます。
フィリングを仔牛肉の薄切りにのせて巻き、ほどけないように爪楊枝で止めます。
肉巻きに小麦粉をまぶし、バターを入れたフライパンで焼き、表面がこんがりしたら白ワインを加えます。
トマトソースを加え、ソースが煮詰まらないように野菜スープを適宜加えながら15分ほど煮込みます。
塩コショウで味を調えたら完成です。


リグーリアの伝統的な肉巻き、トマクセッレ

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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