• 2016.03.01
  • コーヒーのある暮らし
ポートランド市民の多くは、この街に本社を構える3大企業、つまりナイキ、インテル、コロンビアスポーツウェアのいずれかに勤務しています。勤め先がこの3つの大企業でなければ、都心部にあるオフィスの従業員や市の職員として働いている場合が多いです。ワインやベリー類の生産を中心とした農業も盛んな土地柄なので、農業に従事している地元民もたくさんいますが、食の街として知られるポートランドには多種多様な食のビジネスが存在するため、接客業、サプライヤーに調理人と、食品産業に携わる人の比率が高いこともよく知られています。それらの食品産業の中でポートランド市民の自慢のタネは、何と言ってもコーヒービジネスです。 

太平洋岸北西部は明らかにコーヒー栽培に適した土地ではないですが、品の高い個人経営のコーヒーロースター(焙煎人)が多いことは全国的にも非常に有名で、ポートランドは1人あたりのコーヒー消費量が全米ナンバーワンの、最もカフェイン度の高い街と言われるほどです。ここではベテランのバリスタたちがセレブリティとして尊敬されていますし、コーヒー販売のビジネスや、コーヒー豆の焙煎について学べるバリスタ専用コースを設けている学校もたくさんあります。

[caption id="attachment_1416" align="aligncenter" width="400"]012_160226_1ポートランドのカフェの多くはテラス席を設けています[/caption]
街で営業しているコーヒーショップは互いに激しい競争の火花を散らし、各自ユニークな商品を打ち出そうと奮闘しています。コスタリカやブラジルを産地とする希少品種のコーヒー豆を売りにしている店もあれば、24時間以上かけて豆を焙煎する店、インドから輸入した厳選した豆を提供するショップまで出てきています。最近では地元の小さなコーヒー店が、23カラットの金でめっきを施したドリッパーで抽出するコーヒーを出して評判になりました。
この街の注目すべき焙煎業者の中でも別格という感じなのは、さまざまなタイプのコーヒー豆を取り揃え、市内に数件のカフェを持っているスタンプタウン・コーヒーです。ここでは店内でコーヒーを飲んでもいいし、お気に入りのコーヒーの持ち帰りもできます。コーヒーに関するこだわりが強く、近所にそれぞれひいきのカフェがあり、淹れたてのおいしいコーヒーのためなら遠くまで出かけるのもいとわないポートランドっ子たち。彼らのコーヒー愛を支える原動力は、地元の良質な生産物に対する熱い思いからきています。
店内で焼いたおいしいペストリーやケーキを出すカフェも多い一方で、地域のペストリーショップからペストリーを仕入れる代わりにコーヒー豆を卸すという形で業務提携を結んでいる店もあります。

[caption id="attachment_1416" align="aligncenter" width="400"]012_160226_2ペストリーとコーヒーは最高の組み合わせ[/caption]
ポートランドのカフェは、何か飲んでさっさと出て行く使い方以外にも、友達と会う人や、あるいは無料のWi-Fi接続を利用しながら、邪魔されずに長時間勉強する学生のための場所でもあります。カフェのオーナーたちもそうやって長居をしているお客に文句を言わないどころか、本やテーブルゲーム、クイズ大会などのサービスによってさらに居心地よくしようと努めているのです。

[caption id="attachment_1416" align="aligncenter" width="400"]012_160226_3ショッピングとコーヒーは密接な関係[/caption]
カフェで肝心なのはコーヒーの品質ですが、これらのコーヒーショップはそれに加えて、ほっとリラックスできる快適な空間の演出に努めています。
ポートランドっ子がユニークなものを愛するように、ポートランドのコーヒーハウスは店内のデコレーションで個性を出そうとしています。ポートランドで最もトレンディなストリートと言われるノースウェスト21番通りには、天井からテーブルを逆さ吊りにしたインテリアと、入り口の信号機が店内の空席状況を知らせてくれる趣向のカフェがあります。地域在住のアーティストの作品を壁に展示するカフェも多く(たいていの場合それらは販売品で、作品は定期的に入れ替わります)、他にも本の交換会や編み物パーティ、ポエトリーリーディング(詩の朗読会)、本格的なゲームショーなどのイベントを週替わりで開催する店もあります。

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ポートランドの人気カフェ

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ポートランドのカフェの特製コーヒーフィルター





特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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