これは、「カタツムリあります」と言う張り紙なのです。

この時期になると、カフェではみんなこぞってカタツムリを食べます。食べ方はいたってシンプル。注文すると、皿に大盛りに出され、殻の先からちょこっと出ている頭の部分を楊枝で刺して中身を引っこ抜きます。楊枝でいちいち取るのが面倒な人は、頭が出ている部分を口の先に付け、中身をスッと吸い込みます。あまり良い響きはしませんが、これが本当に旨いのです。
この時期、村祭りでの定番でもあり、日本で例えれば、たこ焼きのようなソウルフードでしょうか。ビールとの相性が抜群で、皿の底のエキスをポルトガルのモッチモチのパンに浸して食べるのも最高です。
私は暖かくなり始めると、「カタツムリあります」の張り紙が待ち遠しくなるのです。
カタツムリは、雨の多い時期に活動するのですが、乾期になると殻の入り口に膜を張って中に閉じこもり、エネルギーを蓄えます。この時期がカタツムリの食べ頃だそうです。
市場や八百屋でも販売されてますが、私が住んでいる田舎では、野原でカタツムリ拾いをしている家族を見かけます。うちに卵を売りに来る村のおばあさんも、壁にカタツムリが付いてたりすると、
「取ってもいいか?」
と言って、壁からベリっと剥がしてカバンの中にボトッと落として持って帰ります。

さて、この人気のカタツムリですが、調理するのは意外に大変なのです。
まずは、体の中の不純物を出すため、網に入れて1週間から10日ほど吊るしておきます。このプロセスを早めるには、キャベツを食べさせると良いと言う人もいますし、小麦粉が良いと言う人もいます。吊るした後は、良く水洗いし、大きな鍋に綺麗になったカタツムリを入れ、水をカタツムリがかぶるくらい入れ、火にかけます。この時大事なのが、絶対に沸騰させないこと。カタツムリが驚いて身を引っ込めてしまうと食べられないので、ぬるま湯でゆっくり茹でて行く必要があるのです。鍋のふちに塩を盛っておくのもポイントの一つ。逃げようとするカタツムリは、塩を触って驚いてまた鍋の中に落ちます。こうして十分茹でた後、唐辛子、ハーブ、ニンニク等で味付けをします。

カタツムリと言うと、もう一つ注目したい事があります。
Baba de Caracol(カタツムリのよだれ)が非常に肌に良いとされ、クリームが販売されています。効き目は薄いが自宅でも作られるらしく、インターネットで「自家製カタツムリよだれクリーム」の作り方が出ていたりして興味深いです。
それと、モンゴル人の友達に、風邪をひいた時はカタツムリを舌でベロッと舐めると効くと聞いた事があります。
ちょっと実践しにくいですが・・・。
日本では、紫陽花の葉の上でのんびりしているイメージのでんでん虫ですが、世界ではそうもゆっくりしていられないようですね。