• 2017.12.27
  • 本のあるところ
この国は、夏先になると決まって各地でブックフェアが開催される。大体いつも大きな公園に露店が並ぶが、時には海岸線の隣に真っ白な巨大テントが建つ事もある。何十年も続いているブックフェアもあり、毎年その時期がやってくると夏が近いことを知らせてくれ、まるで目覚まし時計のように、淡々と続く日々の生活から「ハッ」と目覚めた感覚になる。
仕事中に流れるラジオからブックフェアの宣伝が流れると、
「あ。もうこの時期かぁ。」
「今年は、いつ行けるかなぁ。姪っ子の誕生日プレゼントを買いたいんだ。」
という何気ない同僚との会話も、いつも以上に声が弾んで聞こえるのは気のせいではないはずだ。夏の予定をイメージして、夢世界へ移動。
もちろん、ブックフェアも楽しみではある。青く澄み渡った空の下で気になる本を手にしたり、本の表紙を眺めならがぶらぶらと回るのも気持ち良い。


丁度仕事で本に関わることがあったので、今回は有名な図書室と本屋をいくつか紹介してみようと思う。
まずは、世界でも美しいとされるコインブラ大学の図書室と、マフラ修道院の図書室。
コインブラ大学の図書室は1717年、4世紀に渡って王宮として使われていた宮殿に図書室を設けた。それを支援したジョアン5世王は、芸術、科学、文化を促進するのが目的だったらしい。一方、マフラ修道院の図書室もジョアン5世王が作らせたもので、唯一のものや非常に稀な書物を所蔵している為、世界でも重要な図書室の一つとされている。ロココ調のデザインが非常に美しい。
蔵書の数は、コインブラが約25万冊、マフラが約40万冊で、マニュスクリプトは勿論、15世紀から19世紀の貴重な蔵書が揃っている。
最近有名なのは、コインプラ大学の図書室はエマ・トンプソン主演の映画「美女と野獣」のモデルになったことだ。



次は、本屋。一番に思いつくのは、やはりLivraria Lello & Irmão(レロ書店)だろう。ここは、入った瞬間息を飲む程美しい。世界で最も美しい本屋としても有名だが、ハリーポッターファンにとっては、作者のJKローリングがポルトで英語教師をしていた時代に通いつめた本屋として、絶対に外せないポイントだろう。彼女は執筆活動をする上で、この本屋からインスピレーションを受けたことを明かしている。但し、 一目でも見ようと観光客が絶えず、本屋は営業困難になり、一時はガードを雇ったりしてただただ好奇心だけでやってくる人を注意したり「No foto!」の張り紙が各所に貼られるようになった。隠れて写真を撮る人に主人が「写真を撮るな!」と怒鳴るシーンに出くわしたこともある。それが、先日行ってみたら入場料を取るようになっており、入場人数制限もかけてコントロールしていた。それでも本屋の前には長蛇の列が(開店前からも)出来ており、一瞬ポルトガルにいる事を錯覚したようだった。
入場料は3ユーロだが、本を購入した人にはその分を差し引いてくれるらしい。うまいシステムを考えたものだと感心してしまった。ポルトの方がリスボンよりもはるかにビジネス上手だと思う。



さて、残りの紹介はまた次回に。
今晩は、ナイトキャップと一緒に本を味わうとしよう。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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